香港STYLE Vol.23 ザ・ペニンシュラ香港⓵ (2018.06.09)

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香港からこんにちは

九龍半島の先端に建つ、壮麗なコロニアル建築の建物。 皆さまも、きっとどこかでご覧になったことがあるかもしれませんね。

 

ザ・ペニンシュラ香港

(The Peninsula Hong Kong/香港半島酒店)

 

 

華麗なる都市の歴史を刻んできた、アジアを代表する最高級ホテル。

各国のVIP、セレブリティ、ジェットセッターたちの常宿。 そして世界中にあるペニンシュラ・ホテルの総本山です。

 

噴水のあるホテル正面車寄せには、ペニンシュラグリーンのゲスト送迎車、ロールスロイス・ファントムが並び、エントランスでは2頭の獅子像が人々の平安出入を見守り、ゲストを温かく迎え入れます。

このロールスロイス・ファントムのグリーンカラー「ブリュースターグリーン」は、ペニンシュラ専用に調合されている色だそうで、どの自動車メーカーも、他の顧客向け車両に対して用いることは許されないのだそう。

 

正面エントランスでは、白の制服制帽のドアマンやベルボーイがゲストと和かに会話を交わし、館内に一歩足を踏み入れると、ピアノ四重奏の生演奏が流れる1階「The Lobby」で、英国式アフタヌーンティーを楽しむゲスト達。

「東洋の貴婦人」と称されるエレガントで格式のある、ザ・ペニンシュラ香港。

そこで目にする一瞬一瞬は、全てが幸せな記憶。 そして時を経るごとに、想い出がより鮮明になっていく、それがペニンシュラ・マジックなのかもしれません

 

東洋と西洋のラグジュアリーが融合するこの最高級ホテル、今回からいくつかのキーワードに分けてご紹介していきたいと思います。

香港という国際都市と、アジア近代史とも密接な関係があるザ・ペニンシュラ香港にはいったい、どんな秘めたストーリーがあるのでしょうか?

 

時は産業革命後の1830年代。 イギリスは、インド支配に飽きたらず綿製品とアヘンの販路拡張先として、中国大陸への進出を見計らっていました。

当時イギリスのビジネスモデルは、英国・印度・中国の三国間で商品を取り回す三角貿易。

その頃、インドに強力な基盤を持ったユダヤ系財閥のジャーディン・マセソン商会とサッスーン商会。 この2社が、イギリスへの紅茶の輸出、そしてアヘン取引という麻薬貿易の総元締めとして暗躍する2大商社でした

 

香港の、貿易港としてのポテンシャルを充分に理解し、本格的な中国侵略の足がかりが欲しかったイギリスは、無茶苦茶な理屈で中国清朝との間にアヘン戦争を勃発させます

かたや大砲を搭載した蒸気船のイギリス海軍軍艦に対し、中国の清軍は人間操作による木造帆船。 勝敗は、火を見るよりも明らかでした

そして中国にとっては敗戦不平等条約となった南京条約締結により、イギリスは、上海など5港の開港と、香港島を割譲。 その後九龍半島南部、最終的には深圳以南までの九龍半島全域を租借し、香港の植民地経営を開始していきました。

 

 

イギリスの統治が始まった1800年代半ばの香港は、大部分が小さな漁村や農村が点在する田園地帯。 市街地と言える場所は香港島の一部だけで、華南貿易基地として香港が発展する為には、インフラ整備に加え、商業地としてもPRする必要があったのです。

1800年代後半には、九龍半島先端チムサーチョイ (Tsim Sha Tsui/尖沙咀) に、香港島を結ぶスターフェリーが開通。 フェリー乗り場のすぐ前には、中国大陸とを結ぶ鉄道駅も完成

また、埠頭にはヨーロッパからの大型蒸気船も停泊するなど、九龍サイドは、田舎の雰囲気が残りつつも、目覚ましい発展の基礎が急ピッチで進められていったのです

 

その頃、香港の官庁、商社、証券会社のほとんどは、香港島に集まっていました。 しかし、陸と海の両玄関口がある九龍半島こそ、ホテルを建設するに相応しいと考えた人物がいました。

アヘン密売で莫大な富を築いたサッスーン財閥による極東開発計画で、アヘン戦争後にインドのボンベイから上海に本拠地を移し、上海サッスーン商会を設立した人物。 ユダヤ系イラク人の、カドゥーリー兄弟 (Ellis Kadoorie & Elly Kadoorie) です。

香港上海大酒店有限公司「The Hongkong and Shanghai Hotels Ltd.」創業者である彼らは、「スエズ運河より東で最高のホテルを建てる」というミッションのもと、香港でのホテル建設に着手します。

 

それが、ザ・ペニンシュラ香港だったのです

 

当時としては巨費の200万ドルという費用と、第一次世界大戦の混沌とした中での7年の歳月を費やし、ついに1928年12月11日、開業を迎えます。

香港とともに、ザ・ペニンシュラ香港の歴史が幕を開けたのです

 

館内に一歩入るとそこは、建物周辺の雑踏とはまるで別世界の、優雅な空間が広がります。

 

2フロア分の高い天井や支柱には、ネオクラッシック様式の彫刻が細部にまで施され、とてもエレガント。

 

華やかなでクラシカルな社交場としての雰囲気を損なわぬように、コンシェルジュやレセプションは、少し奥まった目立たぬ場所に配置されているという配慮も、超一流ホテルならでは

 

ザ・ペニンシュラ香港。

このホテルを訪れる度に、東西の歴史に翻弄されながらも、ダイナミックに美しく生き延びてきた香港という街や香港人のことを、つい想わずにはいられないのです

JUN

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