香港STYLE Vol.84 エリーの仕掛け (2019.09.01)

香港スタイルいろんな話

香港からこんにちは

 

米系ヘッジファンドのパートナーという要職に就く女友達のエリー。  英語はもちろん、フランス語、アラビア語、ロシア語をビジネスレベルで流暢に話すマルチリンガルの才女でした。

 

あの当時のヘッジファンドマネージャーといえば、複雑な金融工学を駆使して企業や機関の資産運用する、金融界でいうところのトップアスリート。

先物取引や効率良い運用を上手く使いリスクヘッジをしながら、アグレッシブに収益を狙う絶対リターン追求型。 タフで大胆で型破りで巧みで、そして容赦ない、そんな頭脳プレーヤーの集まりがヘッジファンドでした。

 

が、そんな筋金入りの業界に身を置くなどとは、少なくとも私には想像もつかなかったほど、はっきり言って天然キャラ、いや宇宙人キャラのエリー。 もっとも、彼女のそんなところが、私とウマがあった理由だったのかもしれませんが、とにかく、少し話すとめちゃくちゃ頭がいい人だということはすぐ分かった、まぁそんな人でした。

 

今向かっているジュエラーが GRAFF だと知らされて腰が抜けそうになっている私の気持ちを知ってか知らぬか、確かエリーと私はあの時、ダイヤモンドとは全く無関係の話をしながら歩いていたと記憶しています。 不動産開発ならジョージアやクロアチア、マレーシアだとか、医療系や教育系、天然資源系の企業は、今後強いポジションになり続けてもその逆になることはないだろうとか、、、云々云々。  確かそんなような話でした。

笑ってしまいますが、そういうおまけみたいなことは案外覚えているものですね。

ですが、ロンドンクリスティーズからも近い待ち合わせのコーヒーショップを出て、 そんな話をしながら GRAFF へと続く Old Bond Street にエリーへと入った私の内心は、もうすでに ”まな板の上の鯉“ 状態。

何度となくその前を通り、歩き慣れたはずの Old Bond Street。 店舗入り口にはドアマンが配置され、入店は基本予約によるものというヨーロッパ系ハイジュエラーのいくつかや、英王室御用達のジュエラーを通り過ぎ、いよいよ GRAFF のダークネイビーブルーフラッグが見えてくる頃には、私の腹は完全に座りきり、いよいよ目さえも座っていたに違いないと思います

数分以内に現実と気持ちの折り合いをつける羽目になったすぐ隣の努力の人 (←私) をよそにエリーは、気軽に挨拶でもするようなかんじで GRAFF の外ドアマンにアポイントメントの旨を告げ、すると扇文様の象られた重厚なエントランスドアが開けられ、私達は中に入りました。

エントランスホールの内ドア左右にも2名のドアマンがおり、エリーはもう一度、そのうちの一人に、Mr誰それ、と東欧系のようなスラブ系のような魅力的な響きの名前とアポイントメントの旨を伝えました。 

細かいことはよく覚えていませんが、エリーの話し方から、ドアマンを含めた GRAFF スタッフと彼女は随分と顔見知りであり、これから会うらしいMr誰それとはさらに、お互いよく知った人物なのかなぁといった印象でした。

エリーとスタッフはそこで挨拶を交わし、ちょっとだけ雑談。 

 

エントランスホールと室内両方のセンターには大きなフラワーアレンジメントが施され、その空間はゴージャスそのもの。 インテリアは、エレガントで気品のあるオフホワイトとチャーコールグレーで統一されたモダンクラッシックだったと記憶しています。 

でも何よりも、その時初めて入った GRAFF ブティック内でちょっとした衝撃をもって私が気付いたこと、それは、テーブル式のショウケースが一切見当たらなかったことでした。

よく見ると、室内の壁に面した目の高さのガラスケースには、遠目からでもはっきり分かるうずらの卵をふた回りほど大きくした大粒のペアシェイプダイヤモンドネックレスや、300キャラットはあろうかという全てカラーダイヤモンドの総マルチカラーダイヤモンドネックレスなどが飾られていましたが、そんなガラスケースも室内にあるのは3つほど。他にはジュエリーらしきものは一切見当たらなかったのです。

 

ストリートに面したショウケースのジュエリーは、物語に例えるなら、ジュエラーにとってのプロローグ。  ジュエラーの真髄、世界に2つとない極上の逸品は、パブリックには目に触れない場所に保管されており、ひっそりと顧客のためだけに披露されるものなのですね。 

 

ほどなくして一人の紳士が私達の雑談に近付いて来ました。 直感で、この人が先ほどの東欧、スラブ系の名前の人物であり、アポイントメントの相手なのだと分かりました。 エリーはすぐに気がついて、大きな笑顔とジェスチャーと共に、大陸ヨーロッパ式の挨拶を交わし、私をその紳士に紹介してくれました。 

『Jun, this is Mr Dundek, a diamond expert in Graff and has been for many years.』

私が再び腰が抜けそうになったのは言うまでもありません。 そして親愛なる友人兼宇宙人エリーは、やはり確信犯と確信した瞬間なのでした。。。

To be continued…

JUN

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