香港STYLE Vol.31 風水⓶ お婆ちゃんv.s.ハーバード (2018.08.04)

香港からこんにちは

 

香港島のスカイラインを形成する、金融街の高層ビル

ヴィクトリア湾を挟んだ対岸、九龍サイドから見ても、すぐ後ろに迫るヴィクトリア・ピークから見下ろしても、圧倒的な存在感と、立ち昇る龍が見えるかのような躍動感のある、国際金融都市。

と同時に、どこか不思議な静寂感もある、それは摩訶不思議な街でもあります。

 

古来から伝わる風水を重んじ発展を遂げてきた風水都市、香港。  何よりも「氣」の流れを大切にし、風水の考えに沿って社会が機能している伝統的な一面も、この街にはあります。

風水をないがしろにすれば、仕事も人生もうまくいかないことを直感で理解している香港人にとって、風水は生活の一部であり人生の指針でもあり、彼らのアイデンティティそのもの、といってもいいのかもしれません

 

 

 

香港では、ビルや施設の設計段階で、依頼主、コンサルタント会社、設計士、風水師の意見が衝突した場合優先されるのは、200%風水師の意見

 

鶴の一声ならぬ、風水師の一声が、プロジェクトに関わる頭脳明晰ハーバード級、建築構造力学オタクの数字を時にひっくり返し、大幅な設計変更をさせてしまうのですから、香港の風水信念たるや、DNAレベルで不屈

大きなプロジェクトの場合、新しい建築予算の約10%もの費用が風水に充てられるそうで、風水師へのコンサルタント料金と、実際に風水調整する時の膨大な道具・資材・人権費のためなのだそうです

 

香港には、風水師のアドバイスによる設計変更、施工後の増設、改築などの風水話にはこと欠きません。 普段は鼻っ柱の強い香港人が、こと風水となると従順になり「Noと言わない香港人」に。 こんなところも、香港スタイル

 

簡単に設計変更、増設と言っても、親子丼に入れる葱の種類や鶏肉の量を変えるのとは訳が違います 他の箇所の設計への影響も含めて、かなりの負担なはず

設計士はもとより、依頼主や建築エンジニア、コンサルタント会社も大変な思いをするのは目に見えているのに、それでも風水師のアドバイスを受け入れるという、風水を前にしてぐうの音も出ないハーバード達

 

というのはさておき、こんな話も。。。

香港島で最も賑わう繁華街の一つ、ワンチャイ (灣仔 / Wan Chai) 地区に、白い円筒型の高層ビルがあります。

 

ホープウェル・センター (合和中心 / Hopewell Centre) という、ショッピングセンターやオフィスを備えた複合施設です。

1980年に完成の、香港でも早期に建設された高層建築のひとつで、中国銀行タワーが完成した1990年までは、香港で最も高いビルだったそう。

ところがこのホープウェル・センター、完成後、風水師によりある指摘が。。。

 

ビルの外観が、キャンドル (ろうそく) に似ていることから、不運や火を連想させ不吉だというのです

風水では、火はネガティブなパワーとされており、金運やすべての福を燃やしてしまうマイナスの「氣」。

そこでどうしたかというと、ビルの持つ火のパワーに対抗するため、最上階にスイミングプールを増設。 そう、火を消すために水を用意したのです 

ちなみに風水で「水」は、金運や経済的な繁栄をもたらす鍵とされている、最強の「氣」

「風水」という概念に「水」が使われているくらい、水はポジティブなパワーで、水の設備や流れが収入や資産を増やすと言われています 

ということで、ホープウェル・センター最上階のスイミングプール増設は、単純にマイナスパワーの火を消すという意味合いだけでなく、ビルの経済的発展の気運も込められていたのです。

 

香港の繁栄は、地理的な幸運や、早くから西欧列強と関わらざるを得なかった歴史の運などではなく、ハーバード頭脳だって敵わない、数千年前に生きたお婆ちゃんの知恵袋的古来の学問「風水」を今も守り抜く、彼らの信念によるところも、大きいのかもしれませんね

JUN

 

香港STYLE Vol.30 風水⓵ それは射程内 (2018.07.28)

香港からこんにちは

 

何かをする時に人からどう思われるかなんていちいち気にしない、肝の据わった香港人。

好き嫌いや思ったことはすぐ顔に出し、大らかで我が強く、お金が大好き という、基本的に単純明快で、人情味に溢れた人達でもあります。 

 

そんな、仕事も喜怒哀楽もいちいち忙しい香港人の人生で、無くてはならないもの。 それが、、、

風水 (フォン シュェイ)

 

風水は古代中国の伝統思想の一つで、「気」の流れ (龍脈) から、土地や日時の吉凶を占うものです。

香港は、街全体が風水と言ってもいいくらい、日々の生活で風水思想を重んじる風潮が強く、結婚や出産、引越し、通院から日々の運動に至るまで、あらゆる行動に適した日取りや、場合によっては時間を、風水によって決める習慣があります。

 

例えば、出産。 風水師がベストな日時を分単位まで鑑定して決める出産は、もちろん帝王切開。

香港の富裕層の出産はこのタイプが多く、信頼する風水師の指南により、出産日時を早々に押さえるのだそう

「こういうことは早く決まっていると、他の予定がどんどん立てられるから、結局効率がいいの」と、事もなげにサラリと言う、現役金融キャリアの友人マダム。 さすが香港人、彼女も人生を優位にオーガナイズしていくツワモノでした

 

 

大地における気の流れを重視するのも風水思想の大きな柱。 

龍脈の流れが阻害されず、運ばれてきた「気」が溜まり場になっているような土地に、都市や住宅を建造すること。 それによってその地方や一家に優秀な人材が輩出され、結果、冨にも恵まれると考えられているそうです。

 

香港市内には、マンションからオフィスビル、空港、スタジアム、橋やトンネルに至るまで、その配置や設計、内装など、多くが風水に基づいてデザインされ、街中に点在しています。

例えば、セントラル (中環) にある、香港上海銀行本社ビル (香港上海滙豐銀行總行大廈 / Hong Kong and Shanghai Banking Corporation Headquarters)

通称、HSBC。

 

建物外壁に鉄パイプが大胆にデザインされたハイテク建築のHSBC本社ビルは、地上階が吹き抜けになっており、その地面は山側に向かって上るように、ごく緩やかに角度が付いています。

それは、九龍半島からヴィクトリア・ピークに向かって流れる「龍脈」を遮らないようにするための吹き抜けであり、ピークへ昇る「気」の勢いを止めないための地面の角度なのだそうです。

 

 

設計を担当したイギリスの建築家ノーマン・フォスター氏 (Sir Norman Foster) と、ロンドンに本社を置く建築の総合エンジニアリング&コンサルタント会社、アラップ社 (Ove Arup & Partners) は、HSBC新本社ビルを設計する際に、風水師の指南を仰ぐよう施主の香港上海銀行側から指示を受けたそうです。

 

HSBCのシンボル、正面に鎮座する2頭のライオン銅像の設置場所も、風水によって決められていきました。

 

建物外壁の三角の柱、計8ヶ所 (写真下。 一つを赤で印) が 、当初下向きに設計されていたところ、風水師の指摘により全て上向きに修正するなど、風水の理由により複数回に渡り大幅な設計変更を余儀なくされたこともあったそう。

 

又、HSBC本社ビル屋上には現在、窓拭き用のゴンドラが設置されていますが、そのゴンドラを吊るす鉄骨の柱 (赤矢印) が、実は「大砲」に見立てて設置されたという、知る人ぞ知る香港風水裏話もあります

 

HSBC新本社ビルが1985年に完成後、1990年にはお隣に中国銀行タワー (中銀大廈 / Bank of China Tower) が完成しましたが、このタワーのデザインでもある鋭角部分が、HSBCビルに向いており不吉であるとして、これに対抗するためにゴンドラを吊るす鉄骨を「大砲」に見立て、あとから増設。 しかも、それらをわざわざ中国銀行タワーに向けて設置したという

 

それはそれで美しいデザインの、中国銀行タワー (BOC)

 

HSBCの大砲 (赤丸) をバッチリ向けられた、中国銀行タワー (BOC)

 

やられっぱなしはあり得ない、運気を下げる可能性には徹底対抗という、金融に対しても風水に対しても意気込みをヒシヒシと感じるこのHSBCの香港魂、、、というか、香港スタイルであることは確かかもしれません

建築物の向きや方角、形に対しても風水を非常に気にする香港らしい話ですよね。

 

風水というと、どちらかといえば非科学的なもの。 でも案外、環境学的にも地理学的にも理にかなっているのは、街全体が風水を重んじる香港の繁栄が、それを証明しているような気もします

 

JUN

 

香港STYLE Vol.29 スタンレーより⓶ そんなお爺ちゃんの審美眼 (2018.07.21)

香港からこんにちは

 

香港島の最南端に位置する美しいリゾート地、スタンレー (赤柱)。

香港中心部から車で約30分。緑と空と海と太陽に囲まれたこのエリアは、まるで南イタリアの高級リゾート地のような趣きです

 

南欧風ライフスタイルを好む欧米人も多く住み、海岸沿いのメインストリートに並ぶレストランやカフェは、スタンレー住民達の憩いの場。 目の前には、抜けるような高い空と、どこまでも続く大きな海が広がります

海岸沿いプロムナードを朝早くジョギングする人、犬の散歩をする人、カフェでゆっくり新聞を読む人。。。

 

そんなスタンレーを訪れたらぜひ立ち寄ってみたいのが、スタンレー・マーケット (赤柱市場)

 

狭い歩道の両側にぎっしりとお店が並び、少々雑多な雰囲気もこれまた、香港ならでは

 

雑貨やオモチャなどを売る、ザお土産屋さんに混ざって、チャイナテイストの洋服やインテリア、中国刺繍が美しいテーブルクロスやリネンのお店、シルクやレースの専門店、中国絵画を扱う専門店など、バラエティ豊かなお店が軒を連ね、見て歩くだけでも楽しいスタンレー・マーケット  

額縁屋さんが扱う中国アートには結構掘り出しモノもあったりして、店内で一枚一枚絵を吟味していると、思わず時間が経つのを忘れるくらいです。

 

マーケットの外、ほとんど忘れ去られたかのような裏道の端っこに、こんな謎のアンティーク屋さん (ガラクタ屋さん?) もあったり。。。

というかこれ、秦始皇帝陵の兵馬俑に似てるような? ・・・・・・  

 

秦始皇帝陵は世界文化遺産ですから、コレジツハホンモノデス、ということはたぶんないでしょうけれど、それにしても、Youは何しに香港へ???

秦始皇帝陵は、正式に発見された1974年以前から西安地元住民には薄々知られた存在だったという話もありますし、まぁ、型破りてんこ盛り人生の香港人のこと、「なんでも50年くらい前、ウチのお爺ちゃんが西安の山ん中で見つけて、これだけは手放さんっって香港に逃げて来る時も担いで持ってきたらしいのよla〜。 置く場所に困るから売ろうと思って置いてるんだけど、なかなか売れなくてla〜」、、、な〜んてことも充分無くは無い話、という、ここだけの話

 

マーケット歩きを終えて外に出ると、地上にむき出すように根を張るこんな大きな木も。 道に木陰を作り、爽やかな海風を運んできてくれます

 

太陽の光が降り注ぐ中、建物の黄色とその向こうに広がる青色の海が美しいコントラストを奏でる、スタンレーのレトロな街並み。

 

レストランやカフェが並ぶ Stanley Main Streetを歩いて行くと、スタンレー・マーケット (赤丸矢印) とはちょど反対側、Stanley Ma Hang Park /赤柱馬坑公園 (緑色丸) の入り口が見えてきます。

 

スタンレーは、スタンレー・マーケットがあまりにも有名なため、この公園に足を運ぶ観光客はまだ少なく、実はとても穴場

高台の斜面に作られた Stanley Ma Hang Park は、ちょっとしたハイキングにぴったりです。 歩きながらスタンレーの高級住宅地や南シナ海が遠くまで見渡せる、密かな絶景スポットなんですよ

 

途中、階段を下りていくとそこには、地元の人しか知らないような、小さな入り江の浜辺も

 

ここは実は私がスタンレーで一番好きな場所 周辺には高級住宅が立ち並び、浜辺に降りてくるのはその住民がほとんどという、プライベートビーチのような静けさ。

砂浜のベンチに座って夕方の海を眺めていると、波の音と海風がこの上ない幸せな時間を届けてくれます

 

 

香港にとっても、地球にとっても欠かすことのできない存在の、海。

スタンレーには、海や自然を肌で感じられる穏やかな時間と、むかーし昔、秦始皇帝陵の兵馬俑を一体持ってきちゃったかもしれない破天荒なお爺ちゃんが生きたダイナミックな時間、そんな両方が流れているのかもしれません

 

JUN