香港STYLE Vol.30 風水⓵ それは射程内 (2018.07.28)

香港からこんにちは

 

何かをする時に人からどう思われるかなんていちいち気にしない、肝の据わった香港人。

好き嫌いや思ったことはすぐ顔に出し、大らかで我が強く、お金が大好き という、基本的に単純明快で、人情味に溢れた人達でもあります。 

 

そんな、仕事も喜怒哀楽もいちいち忙しい香港人の人生で、無くてはならないもの。 それが、、、

風水 (フォン シュェイ)

 

風水は古代中国の伝統思想の一つで、「気」の流れ (龍脈) から、土地や日時の吉凶を占うものです。

香港は、街全体が風水と言ってもいいくらい、日々の生活で風水思想を重んじる風潮が強く、結婚や出産、引越し、通院から日々の運動に至るまで、あらゆる行動に適した日取りや、場合によっては時間を、風水によって決める習慣があります。

 

例えば、出産。 風水師がベストな日時を分単位まで鑑定して決める出産は、もちろん帝王切開。

香港の富裕層の出産はこのタイプが多く、信頼する風水師の指南により、出産日時を早々に押さえるのだそう

「こういうことは早く決まっていると、他の予定がどんどん立てられるから、結局効率がいいの」と、事もなげにサラリと言う、現役金融キャリアの友人マダム。 さすが香港人、彼女も人生を優位にオーガナイズしていくツワモノでした

 

 

大地における気の流れを重視するのも風水思想の大きな柱。 

龍脈の流れが阻害されず、運ばれてきた「気」が溜まり場になっているような土地に、都市や住宅を建造すること。 それによってその地方や一家に優秀な人材が輩出され、結果、冨にも恵まれると考えられているそうです。

 

香港市内には、マンションからオフィスビル、空港、スタジアム、橋やトンネルに至るまで、その配置や設計、内装など、多くが風水に基づいてデザインされ、街中に点在しています。

例えば、セントラル (中環) にある、香港上海銀行本社ビル (香港上海滙豐銀行總行大廈 / Hong Kong and Shanghai Banking Corporation Headquarters)

通称、HSBC。

 

建物外壁に鉄パイプが大胆にデザインされたハイテク建築のHSBC本社ビルは、地上階が吹き抜けになっており、その地面は山側に向かって上るように、ごく緩やかに角度が付いています。

それは、九龍半島からヴィクトリア・ピークに向かって流れる「龍脈」を遮らないようにするための吹き抜けであり、ピークへ昇る「気」の勢いを止めないための地面の角度なのだそうです。

 

 

設計を担当したイギリスの建築家ノーマン・フォスター氏 (Sir Norman Foster) と、ロンドンに本社を置く建築の総合エンジニアリング&コンサルタント会社、アラップ社 (Ove Arup & Partners) は、HSBC新本社ビルを設計する際に、風水師の指南を仰ぐよう施主の香港上海銀行側から指示を受けたそうです。

 

HSBCのシンボル、正面に鎮座する2頭のライオン銅像の設置場所も、風水によって決められていきました。

 

建物外壁の三角の柱、計8ヶ所 (写真下。 一つを赤で印) が 、当初下向きに設計されていたところ、風水師の指摘により全て上向きに修正するなど、風水の理由により複数回に渡り大幅な設計変更を余儀なくされたこともあったそう。

 

又、HSBC本社ビル屋上には現在、窓拭き用のゴンドラが設置されていますが、そのゴンドラを吊るす鉄骨の柱 (赤矢印) が、実は「大砲」に見立てて設置されたという、知る人ぞ知る香港風水裏話もあります

 

HSBC新本社ビルが1985年に完成後、1990年にはお隣に中国銀行タワー (中銀大廈 / Bank of China Tower) が完成しましたが、このタワーのデザインでもある鋭角部分が、HSBCビルに向いており不吉であるとして、これに対抗するためにゴンドラを吊るす鉄骨を「大砲」に見立て、あとから増設。 しかも、それらをわざわざ中国銀行タワーに向けて設置したという

 

それはそれで美しいデザインの、中国銀行タワー (BOC)

 

HSBCの大砲 (赤丸) をバッチリ向けられた、中国銀行タワー (BOC)

 

やられっぱなしはあり得ない、運気を下げる可能性には徹底対抗という、金融に対しても風水に対しても意気込みをヒシヒシと感じるこのHSBCの香港魂、、、というか、香港スタイルであることは確かかもしれません

建築物の向きや方角、形に対しても風水を非常に気にする香港らしい話ですよね。

 

風水というと、どちらかといえば非科学的なもの。 でも案外、環境学的にも地理学的にも理にかなっているのは、街全体が風水を重んじる香港の繁栄が、それを証明しているような気もします

 

JUN

 

香港STYLE Vol.29 スタンレーより⓶ そんなお爺ちゃんの審美眼 (2018.07.21)

香港からこんにちは

 

香港島の最南端に位置する美しいリゾート地、スタンレー (赤柱)。

香港中心部から車で約30分。緑と空と海と太陽に囲まれたこのエリアは、まるで南イタリアの高級リゾート地のような趣きです

 

南欧風ライフスタイルを好む欧米人も多く住み、海岸沿いのメインストリートに並ぶレストランやカフェは、スタンレー住民達の憩いの場。 目の前には、抜けるような高い空と、どこまでも続く大きな海が広がります

海岸沿いプロムナードを朝早くジョギングする人、犬の散歩をする人、カフェでゆっくり新聞を読む人。。。

 

そんなスタンレーを訪れたらぜひ立ち寄ってみたいのが、スタンレー・マーケット (赤柱市場)

 

狭い歩道の両側にぎっしりとお店が並び、少々雑多な雰囲気もこれまた、香港ならでは

 

雑貨やオモチャなどを売る、ザお土産屋さんに混ざって、チャイナテイストの洋服やインテリア、中国刺繍が美しいテーブルクロスやリネンのお店、シルクやレースの専門店、中国絵画を扱う専門店など、バラエティ豊かなお店が軒を連ね、見て歩くだけでも楽しいスタンレー・マーケット  

額縁屋さんが扱う中国アートには結構掘り出しモノもあったりして、店内で一枚一枚絵を吟味していると、思わず時間が経つのを忘れるくらいです。

 

マーケットの外、ほとんど忘れ去られたかのような裏道の端っこに、こんな謎のアンティーク屋さん (ガラクタ屋さん?) もあったり。。。

というかこれ、秦始皇帝陵の兵馬俑に似てるような? ・・・・・・  

 

秦始皇帝陵は世界文化遺産ですから、コレジツハホンモノデス、ということはたぶんないでしょうけれど、それにしても、Youは何しに香港へ???

秦始皇帝陵は、正式に発見された1974年以前から西安地元住民には薄々知られた存在だったという話もありますし、まぁ、型破りてんこ盛り人生の香港人のこと、「なんでも50年くらい前、ウチのお爺ちゃんが西安の山ん中で見つけて、これだけは手放さんっって香港に逃げて来る時も担いで持ってきたらしいのよla〜。 置く場所に困るから売ろうと思って置いてるんだけど、なかなか売れなくてla〜」、、、な〜んてことも充分無くは無い話、という、ここだけの話

 

マーケット歩きを終えて外に出ると、地上にむき出すように根を張るこんな大きな木も。 道に木陰を作り、爽やかな海風を運んできてくれます

 

太陽の光が降り注ぐ中、建物の黄色とその向こうに広がる青色の海が美しいコントラストを奏でる、スタンレーのレトロな街並み。

 

レストランやカフェが並ぶ Stanley Main Streetを歩いて行くと、スタンレー・マーケット (赤丸矢印) とはちょど反対側、Stanley Ma Hang Park /赤柱馬坑公園 (緑色丸) の入り口が見えてきます。

 

スタンレーは、スタンレー・マーケットがあまりにも有名なため、この公園に足を運ぶ観光客はまだ少なく、実はとても穴場

高台の斜面に作られた Stanley Ma Hang Park は、ちょっとしたハイキングにぴったりです。 歩きながらスタンレーの高級住宅地や南シナ海が遠くまで見渡せる、密かな絶景スポットなんですよ

 

途中、階段を下りていくとそこには、地元の人しか知らないような、小さな入り江の浜辺も

 

ここは実は私がスタンレーで一番好きな場所 周辺には高級住宅が立ち並び、浜辺に降りてくるのはその住民がほとんどという、プライベートビーチのような静けさ。

砂浜のベンチに座って夕方の海を眺めていると、波の音と海風がこの上ない幸せな時間を届けてくれます

 

 

香港にとっても、地球にとっても欠かすことのできない存在の、海。

スタンレーには、海や自然を肌で感じられる穏やかな時間と、むかーし昔、秦始皇帝陵の兵馬俑を一体持ってきちゃったかもしれない破天荒なお爺ちゃんが生きたダイナミックな時間、そんな両方が流れているのかもしれません

 

JUN

 

香港STYLE Vol.28 スタンレーより⓵ 海風の薫り (2018.07.14)

香港からこんにちは

 

1年の4分の3は夏、という香港。 高気温なだけでなく、雨期には湿度がほぼ100%という蒸し暑い日も続きます。

これだけ人口密度の高い香港で、それでもなぜか息苦しさを感じないのは、ここには不思議な海風がふいているからのような気がします

 

ヴィクトリア・ピークのウォーキングコースでも、セントラルのスターフェリー桟橋でも、摩天楼の合間をゆくトラムの中でも、そして、街のどこを歩いていても、どこからともなく流れてくる香港の海風

それは、威圧感も閉塞感も束縛感もない、香港人のアイデンティティを象徴するかのような、自由な海風

遠く南シナ海からの空気に乗って流れてくるこの海風が、香港に足を踏み入れた人々の全てを受け入れ、アジアで最も開けた市場と、成熟した香港社会の土壌を作ってきたのかもしれません。

そんな自由な海風に誘われるように、私がよく気分転換に訪れる場所があります

 

スタンレー  (赤柱/チェ チュウ。英: Stanley)

 

 

香港島の南東部先端に位置するスタンレー (上の赤丸) は、香港の英国入植が始まった1842年当時、香港で最も栄えていた場所だったそうです。

 

もともとは香港島の小さな漁村だったスタンレー。 やがて、風光明媚なこの地に魅せられた多くの西洋人実業家や富裕層が居を構えるようになり、現在は香港屈指の高級住宅地としても知られています。

 

豊かな自然や、地中海地方を彷彿とさせる開けた街並み、入江の静かなビーチ。 それに、穏やかな南シナ海の海風

そこに身を置くだけで、そこを歩くだけで、心も身体もエネルギーを充電できる、そんな香港の楽園です

 

 

 

香港島の中心地から車で30〜45分。 地下鉄は通っていませんが、セントラル (中環) や コーズウェイベイ (銅鑼灣) からスタンレー行きの2階建バス (No.260、6X、6、6A、73、66) や、ミニバス (No.40) が約10分間隔で出ていますので、ちょっとしたデイトリップには最適です。 

海岸沿いに並ぶレストランや商店は、週末ともなると、このエリアに住む富裕層の家族連れで賑わい、テラス席で海風に吹かれながらの一杯は至福の味

 

海風のように気ままに海岸沿いを歩くと、どこからともなく耳に心地よい波の音が聞こえてきます。

 

コロニアル様式の建物の横を歩いてゆくと、、、視界が開け、Blake Pier (ブレーク桟橋) が見えてきます。 

1800〜1900年代にかけて、新しく就任する香港総督が英国から香港に到着する際や、英王室関係者が香港視察に訪れる時など、彼らが最初に降り立つ場所として使われていた埠頭だったそうです。

 

 

Blake Pier の先端に立つと目の前に広がるのは、遮るもののない、海と空。

この先には、、というより、もうここが、南シナ海なんですよね

 

170年以上前の今日も、きっと同じ色だったに違いないスタンレーの海と空、そして海風の薫り

イギリスとは気候も風土も大きく異なる、アジアのまだ未開の地であった当時の香港。 そこに降り立った香港総督をはじめとする総督府のイギリス人官僚達もきっと、今目の前に広がる同じ景色を見ながら、同じ海風を感じながら、香港に入っていったのでしょう。

濃い翡翠色の南シナ海。 そして香港の玄関口であった、スタンレーに流れてくる海風。

それが頬をかすめる時、こんなにも自由で温かく、悠然とした凛々しさも持つ、香港という街の強い生命力を感じずにはいられません。

 

次回は、スタンレーの街を少し歩いてご紹介しますね。 お楽しみに!

 

JUN

 

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