香港STYLE Vol.50 ある数字から想う香港 (2018.12.15)

香港からこんにちは

 

今年の1月からスタートした香港STYLEですが、気がつけばおかげ様で今回が50回。 不思議な魅力を持つ香港という街を、現地生活者の目線で、とりとめもなく紹介して参りました。

 

思えば、日本人両親のもと、英国統治下真っ只中の香港で生まれ幼少期を過ごし、英国の香港統治が終了し中国に返還された年に、英国へ移住。 十数年の英国生活を経て、また再び香港に住むことになった時、私の中の「日本・香港・英国」をつなぐ目に見えない糸の存在を、感じずにはいられませんでした。

淺水灣 (Repulse Bay) にて。

 

「50回」 50回目の香港STYLE。 

ハーフ・アニバーサリー的な小さな節目。 本当に取るに足らない、小さな小さな節目ですが、香港と関連付けた時、私の中で「50」という数字は、また別の大きな意味を持っていることに気がつきました。 

 

「50年」 50年の不変。 

自由放任資本主義で社会が成り立ってきた英国統治下の香港が、一党独裁社会主義の中国に引き渡されるという、宗主側としても例がない植民地支配終了の、建て前上は円満撤退。 しかし蓋を開ければ、あの英国が譲歩する形ともなった返還交渉に際して、当時の中国最高指導者・鄧小平が、不安がる香港民をなだめ、返還を平穏に移行させる便宜策として構想した、香港の「一国二制度」。 

それが香港で維持されるはずの年数が「50年」なのです。

 

香港STYLE「50回」という、ミジンコより小さい私的な節目に、「50年」という、香港にとって壮大かつ重要な意味合いを持つ年月を重ね合わせるのは、単に数字が同じとはいえ、身の程知らずというか大袈裟であることは充分承知しています。

それでも、200年住んでも簡単に語れるほどヤワな街ではない「香港」を、英国と香港にどっぷり浸かりながら、失うことはなかった香港への敬愛の意を込めて、この機会に何回かに分けて、少しだけお話ししてみたいと思います

 

改めて、、、香港。 

 

ほとんどの日本人にとって、現在の香港といえば「ショッピングとグルメ」、「気軽に行ける海外旅行先」といったイメージでしょうか。 

ヨーロッパの高級ブランド品や宝飾品、高級時計、骨董品、裏路地に並ぶ屋台の日用雑貨、合法非合法の露天で売られる激安ITものや家電まで、あらゆる物があらゆる値段で揃う、買い物天国の街。 

 

摩天楼やヨットハーバーを見渡す高級会員制クラブやホテルで楽しむ、静かなアフタヌーンティー。

かと思えば、ワイワイガチャガチャと食器の音を立てながら家族や友人と喋って食べて笑って、また食べて喋って笑う、そんな喧騒の飲茶。 そして相席はお決まりの大衆食堂、茶餐廳。

香港について、長いこと英国の植民地で、いつだったか中国に返還されたということは知ってるけれど、そんなことより、アワビやフカヒレなどの高級珍味、高級中国茶葉、美味しいチキンやダックの丸焼きが手に入る、そちらの方が面白い、グルメ天国の街。

 

そんな、何でもアリの混沌とした香港。 いつもエネルギッシュで、底抜けに明るくて温かくて華やか。

そんな香港を見るたびに、この街が辿ってきた稀有な運命に想いを馳せ、いつのまにかここに寄り添う自分に気がつくのです。

 

香港を表現するのに「歴史に翻弄されてきた街」という言い方をよく見かけます。

確かに史実の表面だけを見ると翻弄されているように見えるのかもしれませんが、私はこれには違和感があり、そうは思っていません。  この街は、そしてこの街に住む人たちは、何かに翻弄されるほどヤワではないと思うのです。

 

つまるところ香港は、香港人は「何が最も大切なことか、本能的に知っている」人達なのではないか。 そこに尽きるのではないか、と。

香港は、これといった産業を持たない小さな漁港が点在するに過ぎない、大小の島々からなる中国の一地方でした。

そんな香港の波乱の歴史は、アヘン戦争後の南京条約で香港島を英国に割譲されるところから始まりました。

 

英国が1842年に香港の植民地統治を開始してこの地にやって来たのは、アヘン貿易で富を築き、さらに東インド会社の利権を求める商人達。

このアヘン貿易商人達は、英国本国では上流階級やエリート層などではないものの、アヘン貿易によって築いた巨額の資本により、植民地政府である香港政庁との強固な関係を背景に、各種権益を独占するようにして香港経済を支配していきました。 

 

そんな中、いち早く香港の独占的権益構築に乗り出していたのが、スコットランド出身のユダヤ人、ウィリアム・ジャーディンとジェームス・マセソン。

彼らは香港上海銀行 (HSBC) に特権を与えるなどしてHSBCを事実上の香港中央銀行にし、のちのジャーディン・マセソン・グループ傘下の最大手不動産管理会社ホンコン・ランドが、香港島中心部セントラルの物件を多数所有するように、英系資本による香港経済の権益独占は、長いこと続いていきました。

 

植民地経済とは、少々乱暴な言い方をすればすなわち、「支配層の居心地さえ良ければそれでよし」というもの。

ですが、英系資本が権益を独占し続ける中、その隙間にたくましく、したたかに入り込んで行ったのが、商売センスに長けた香港人による華人資本でした。

 

次回は、華人資本と彼らのエネルギーから見える香港に、スポットライトを当ててみたいと思います

JUN

 

香港STYLE Vol.49 チョコとクリスマスと私の時間 (2018.12.8)

香港からこんにちは

 

12月に入り、街はすっかりクリスマスムードの香港。 

 

ラグジュアリーブランドが集まる 中環 (Central) のショッピングモールやブティックのショーウィンドウは、この時期、クリスマスデコレーションでより一層華やかになります。 

 

香港は、様々な文化や宗教バックグラウンドを持つ人達が住む多民族国際都市ですので、クリスマスに関しても、宗教的、伝統的な趣旨は、欧米ほど濃くはありません。 

楽しくて華やかでハッピーで、気分が上がればそれでよし

 

香港キッズにとってクリスマスは、紅白のジャンパーを着た白い顎髭の大柄な ”鬼佬“ お爺さんが「Ho Ho Ho!」と言いながらプレゼントを持ってきてくれる、楽しいイベント

拝金主義的な側面も合わせ持つ香港のマテリアル社会で、タフ&スポイルに育つ香港キッズが、思う存分甘やかしてもらえる、夢のような時間がクリスマスなのです

 

各ショッピングモール、各ブティックごとに趣向を凝らしたデコレーションでクリスマスの雰囲気を盛り上げますが、中でも毎年大掛かりなデコレーションで、見る人を楽しませてくれるのが、中環 (Central) の 置地廣場 (The Landmark) 地上階、アトリウムに設置されるクリスマスデコレーション。

デコレーションというよりは、もうほとんど「アトラクション」のような大掛かりなサイズで、ランドマーク・ビルの4階分吹き抜けの屋内コートヤードのスペースを大胆に使って設置されます。

昨年2017年のクリスマスは「It’s a small world」でした。

時間になると、世界中の子供達の人形がアトラクションの中から出てきて、音楽に合わせて動く仕掛けが愛らしく、多くの人々を魅了しました。

 

 

そして今年、ランドマークに突如現れたのは、、、

 

「Monster’s Chocolate & Sweets Factory」

 

チョコレートとイタズラが大〜好きな、ポップなモンスター達。 個性豊かな愛らしい彼らが美味しいチョコを一生懸命作る工場で、このアトラクションを訪れる子供達は皆大喜び

 

工場の中には、様々なモンスター達がそれぞれの部署で (?) 働いています。

生真面目モンスターも、、

 

すっとぼけモンスターも、、

 

姉御肌の姐さんモンスターも、、、

 

できたてチョコを隠れて頬張る、いたずらっ子モンスターも、、、

 

上下に動くチョコレート箱ピックアップ用クレーンで遊ぶ、お茶目くんモンスターも、、

 

みーんな気のいい愉快な仲間たちで、美味しいチョコレートが大好きなモンスター達です

 

 

そんなポップでやんちゃで可愛い空間とは対照的に、大人にとっても、シックで落ち着いたクリスマスの空間が、香港にはあります。 

 

例えば、名門マンダリン・オリエンタルホテル。

これぞ East meets West。 最高に居心地のいい、東西様式の見事な融合です。

 

グリーンとゴールドだけで、こんなにエレガントでシックなツリーができるのも、香港スタイルの香港マジックなのかもしれません。

 

そんな成熟した空間で過ごすクリスマスシーズンの午後のひとときは、また普段と違ってとてもラグジュアリー。

 

それは、マテリアルからは得られない時間と空間と精神の贅沢、とでも言いましょうか。

 

 

その充実度は、物質を得た時のような強烈なインパクトのある瞬時の満足感はないけれど、感性と知性にじんわりと染み渡り、時間が経つにつれそれはさらに深く浸透していき、決して色褪せない人生の記憶になるような気がするのです。

 

JUN 

 

 

香港STYLE Vol.48 オークションとアートトーク (2018.12.1)

香港からこんにちは

 

スイスで行われたクリスティーズ・ヨーロッパのジュネーヴ・オークションに続いて、Christie’s Hong Kong (佳士得 香港) オークションが行われました。

 

11月23日〜28日、場所は香港島の Wan Chai (灣仔) 地区にある Hong Kong Convention and Exhibition Centre (香港會議展覽中心) です。

毎年香港オークションの会場となる、通称コンヴェンション・センターは、国際商業展示会や国際会議、大きなセミナー、香港政府の行事やセレモニーなどにも使われる複合施設。 1997年、香港の中国返還式典もこちらで行われました。

 

オークションは、ジュエリー、宝石、時計、中国の古典美術や工芸品、陶器、日本美術、西洋美術、現代アート、ワイン、それに香港ならでは、Hermès のハンドバッグ (プレシャススキン素材や世界で一つしかないオーダーものデザインなど、希少価値の高いもの限定) など、各分野ごとに細かいスケジュールが組まれます。

 

また期間中に、クリスティーズがオークション出品物に関連する専門家達を世界中から招待し、セミナーやパネルディスカッション形式のアートトークを毎回いくつか行うのですが、 これがまた、実に大変に面白いのです。

 

これらはオークションの合間に行われるのですが、どこどこ大学何ちゃら教授の、机上の独断美術史講義なんかを聞くより、2000倍面白い!

なぜって?   それは簡単。

 

ずばり! 

 

このアートが、お金と連動しているから。 

 

美術品オークションは、れっきとしたビジネス。出品物に関わってきた人、時間、歴史、全てひっくるめて値段が付けられ、取り引きされ、投資の対象にもなるのです。

 

現在進行形の美術品市場を、多角的に知り尽くしたクリスティーズのスペシャリスト達が、さらにその道のザ専門家から、時にユーモアたっぷりに引き出す話は、現実的で実用的で刺激的。

目の前のたった一枚の、百何十億という夢のような絵画から、西洋史と東洋史の点と点が繋がり、思わずポンっと膝を叩きたくなるような瞬間にも出会うのです。 

そんな爽快さこそも、美術品オークションビジネスの醍醐味なのかもしれませんね。 

 

 

芸術も科学も医学も、人間がやることにさほど違いはないと思っています。 

どんなに崇高ぶっていても、偉そうなことを言っても、お金が直結するから真理が見える。

そんなクールで当たり前のことを気づかせてくれるのが、オークションのおもしろさなのです。 

 

こちらは、24日に行われたヴァン・ゴッホの絵と生涯についてのパネル・ディスカッション。

左から順に、このディスカッションの司会、クリスティーズ・アジア取締役 Elaine Kwok 氏 、ヴァン・ゴッホ美術館館長 Axel Ruger 氏、クリスティーズ・グローバル会長 Jussi Pylkkanen 氏と、もう一人、ヴァン・ゴッホ美術館主任研究員 Teio Meendendorp 氏の4人で、大変興味深い話を聞くことができました。 

ヴァン・ゴッホは実は画家ではなかった?!件、日本文化の持つ繊細美への憧れが強過ぎて、それを求めて南フランスへ移住した?! (けれども全然違った件。。。

 

さて今回、香港オークションのスターセールは、中国古典美術の最高峰、Su Shi (蘇軾/1037〜1101) による 「Wood and Rock」(木石圜)。

 

落札価格 HK$463,600,000 (約67億2千万円) なり。 

 

Su Shi は中国北宋代の政治家であり、詩人、作家、書家、画家といういくつもの顔を持った、中国のレオナルド・ダ・ヴィンチとも呼ばれる人物です。

 

また、ジュエリー部門では、21石のカシミール・サファイアと、23石のダイヤモンド、合計109.98キャラットのネックレス「The Peacock Necklace」が注目されていまた。

 

カシミール・サファイアそのものが大変希少なうえ、21石の色をここまで揃えることのできたネックレスは奇跡に近く、こういった色揃えだけでも100年はかかるでしょう。

 

 

滑らかなヴェルヴェットの手触りを思わせるような深いブルーの輝きに、ふわっとシルクをかけたような、なんとも言えない独特の色とオーラを持つカシミール・サファイア。

見惚れるほシンプルで、見惚れるほど美しく、見惚れるほど知的な「The Peacock Necklace」。

 

落札価格は,、HK$116,537,500 (約16億9千万円) 。

カシミール・サファイアとしてはオークション史上、再び世界最高額を記録しました。

 

 

優れたアートや素晴らしい宝石は、限られたごく一部の才能や、自然が織りなす奇跡の積み重ねによって作られるもの。けれども、それらの作品は私達万人に開かれています。

 

オークションハウスを通じて受け取るもの、それは精神的な富の蓄積であり、もしかしたら、一生をかけて手に入れていく真の豊かさなのかもしれませんね。

 

JUN

 

香港STYLE Vol.43 ポジティブファッションが世界を変える⓶ タイムレスな赤 (2018.10.27)

香港からこんにちは     タイムレス。 もしかしたら、この言葉ほど香港の一般的なイメージとは違うものもないかもしれません。 また、この言葉ほどイギリスのイメージを表現するのにぴったりな言葉もないでし…

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