香港STYLE Vol.39 宝石が贈る記憶 (2018.09.29)

香港からこんにちは

 

中秋節が過ぎ、都心でも少しずつ秋の気配を感じるようになってきた、9月も終わりの香港

 

初夏から夏にかけては、空の真上から強く照りつけていた太陽もここにきて、ふっと力を抜いたように穏やかな陽射しに変わり、人や風景とも調和する秋色ハーモニーを作り出しているようです

世界中の人々が集まる香港には、異なる文化や価値観を受け入れる、精神的に豊かな土壌があります。 若い頃から海外で教育を受ける若者も多く、考え方も美意識もグローバル。 

斬新な発想や、良いと思ったらすぐにアイディアを取り入れるスピード感とバイタリティが人を動かし、情報を動かし、変幻自在に姿を変える香港という街を動かしていきます。

大局的な強さと知性を兼ね備えたこの街の大胆さは、そのまま人々のファッションやライフスタイル、ビジネスにも反映されています。

 

ジュエリーの世界もそう。

デザインが個性的で華やかなのはもちろん、世界的に希少価値の高いものや財産価値、投資価値のある宝石も好まれ、代々のコレクターもいるほど。

 

香港は世界の金融センターというだけでなく、アート、とりわけジュエリーの世界でも、国際的に重要な都市と位置付けられています。

例えば、ヨーロッパの大手オークションハウス、クリスティーズやサザビーズが、著名人所有のプライベートセールスや、歴史的に価値のある品ばかりなどを集めた重要なセールスをする前に、世界の主要都市を周り数日限定でオークション品を展示する「プレビュー」というのを行いますが、アジアを周る際にプレビューの中心的役割を担う都市が、香港。

アジアで大きなセールスがある場合も、オークションは香港で行われます。

 

世界最高級クラスの宝石やジュエリーが、間近で見られるオークションプレビューには、必ずそれぞれの専門家が付き、時に、彼らから出品物の興味深いストーリーなどが聞けたりもします。 

 

近いものでは、11月13日にスイスのジュネーブで行われる、クリスティーズのジュエリーオークション「Magnificent Jewells」。

オークションハイライトの一つで、かつてオッペンハイマーコレクションでもあった、世界的に希少な天然ピンクダイヤモンドのリング。 それが現在、香港クリスティーズでプレビュー中です。 (10/4まで)

 

ファンシーヴィヴィッドという、希少なピンクダイヤモンドの中でも、されに最上級クラスとなる高い彩度と濃いカラーを持ち、カットも完璧なバランス、センターストーンは18.96キャラットという、まさに至宝の極上品です。

予想落札価格は、30〜50million USドル (約36億〜56億8千万円) とのことですが、実際の落札価格はおそらく軽々とこれを超えることでしょう

 

歴史的価値が高かったり、世界的に重要なオークションが行われる場合は、アジアでは香港、アメリカではニューヨーク、ヨーロッパではジュネーブかロンドン、とほぼ決まっています。

そんな香港のオークションハウスで見ることのできる見事なジュエリーの数々は、圧倒的な存在感で私達に語りかけてきます。

 

ショウケースのその小さな空間の中に、ひっそりと佇むひとつひとつの宝石。

ですがそれらには、装飾品や芸術品としての価値と同時に、もう一つの素晴らしいストーリーがあるのをご存知ですか?

 

数億年前に生まれた壮大な地球の記憶を持つ、鉱物としての研磨される以前の宝石達は、多くの奇跡と膨大な時間、そして最終的に人間の情熱と才能と技術を経てやっと、今ここにその姿となり存在しているのです。

 

それでもきっと、私達人間が関わっているのは、その宝石の持つ記憶の中では、最も手前のほんの一瞬だけでしょう。 それだけ宝石には、遥かなる地球のエネルギーが、長い長い記憶として組み込まれているのです。

 

私達の想像を遥かに超える強い生命力を持ち、地球内部の膨大な高温高圧エネルギーが加わったことよって生まれた、石の鮮やかな色、彩度、透明度。

中の内包物でさえも、宝石の個性と言える唯一無二の美しさを帯びたそれらは、ひとつとして同じものはありません。 

そんな宝石が記憶に持つ、地球の神秘に思いを馳せる時、なんだかワクワクしませんか?

 

宝石は、今ここにジュエリーとして存在していること自体が、大変な幸運を持っている証。

なぜって、それは数億年前の地球から送られてきた、奇跡であり生命の源であり、お守りなのですから

 

JUN

香港STYLE Vol.38 ユニバーサルなシグナル10 (2018.09.22)

香港からこんにちは

 

大荒れに荒れた先週末。

いやいや何が荒れたって、金融市場でもなく、大井競馬のレースでもなく、うちのオカンでもなく、、、

 

香港住民もれなく全員、強制引きこもりとなった、超大型台風「山竹」(Mangkhut。マンクット)。

 

香港の気象台に当たる香港天文台 (Hong Kong Observatory) が出す、暴風最高警告レベルのシグナル10が発令され、家の中では窓に近寄らぬようアナウンスされ、それでも猛威を振るい香港全土に爪痕を残していきました。

 

山の形が変わってしまうほど多数の木がなぎ倒され、道路は寸断。

これは香港島中心部、Mid-LevelsのKennedy Road。

 

あまりの風圧に鉄筋コンクリートの高層マンションも揺れ、地上100メートル級の自宅で船酔いする羽目になった、多くの香港住民

オフィスビルの窓ガラスは、強化ガラスにも関わらず風圧で割れ、

大事な書類よ、さようなら〜

 

何もしないよりはきっとマシ、と心に言い聞かせ、祈るような気持ちでマスキングテープを貼って窓を補強する親のその横で、ふざけるキッズ

まぁこうなるわな。 スパイダーマン

 

こちらは、友人宅のやる気ゼロのヘルパーさん作、窓補強。(台風が来るでしょ。 うちのヘルパーに予防策を敷いてと頼んだのよ、例えば、窓に大きなクロスを接着してテープしてとかね。 で彼女がやったのがこれ

ちっとも予防策になってない上に、なんかとってもクリスチャン。 祈れば何とかなる的アプローチか 

 

一方で、祈りも努力も虚しく場所によってはこうなる、ホラーの高層マンションベッドルーム。 窓枠ごと、バイバイウィンドウ

 

また、高層ビル建築現場のクレーンが折れて落下したり、冷房室外機が外れて宙に舞い、2人掛けソファがビル50階の高さを超えて飛んで行き、下を見れば海水に浸るハーバーフロントマンションのレセプションもあり。。。

 

 

大混乱の台風マンクットでしたが、香港での人的被害は、実はケガ人のみ。 それも香港全土でたったの391人という少なさ。

あっという間に元の生活に戻る街の回復の速さには、香港社会の段取りの良さと、明解なシステム作りの上手さが関係しているようです。

 

 

香港には、台風の暴風警告レベルを、簡単な数字で表示するシグナルがあります。 台風が近づくと香港天文台からシグナル警報が発令され、低い方から順に、1、3、8、9、10。

シグナル1は、ほぼナッシング。 3も全〜然余裕 

ところが、これがシグナル8になると、全ての交通機関が止まり、証券取引所を始め、金融機関、企業、商店も商業活動停止と法で決められています。 この時点で、香港の路上からほぼ人が消えます。 (ただし、8が解除されたら2時間以内に会社へGoという、無情ルールもあり)

さらには、暴雨警報を表すレインストームシグナルも。 弱い方からイエロー、レッド、ブラックと色で表し、小さな子供でも外国人でも理解できる、大変合理的なガイドライン。

 

マンダリンの扇子も一枚吹っ飛んだ

 

中心付近の気圧905hPa、最大風速60m/s、最大瞬間風速80m/sの勢力で、、、などと言われて、はい了解〜と、実感として掴める人がどれくらいいるかと考えたら、この香港天文台の簡単な数字と色による、名付けて「ほなごちゃごちゃ言わんで警告したれシステム」はまことに賢く、これぞ香港スタイルと思うのです。

 

かくいうマンクットは、暴風暴雨共にレベルMAXの「シグナル10 & ブラックレインストーム」台風であると数日前から発表されていたわけで、誰でも理解できる明解なガイドラインがあるだけで、無駄な被害を未然に防げられる部分というのも、あるかもしれませんね。

 

ちなみにマンクットという名前そのものは、この超デラックス破壊力の台風からは想像もつかない、甘〜くジューシーなフルーツ、マンゴスチンのこと

台風のネーミングさえも連想の斜め上。 予想外の巨大台風を生み出す、マジギレ寸前の最近の地球

あぁそういえば遥か彼方の火星でも、こんな嵐が毎日あるんだったなぁと映画「The Martian」を思わぬところで思い出し、現在のグローバル社会から未来のユニバーサル社会へと、台風マンクットから始まるギャラクシーへの壮大な夢

 

そしてどこの惑星に移住しても、港人のこのスピリットはきっと永遠かなとも思うのです

We love to take care of our money.

 

JUN

 

香港STYLE Vol.37 中秋節の気配 (2018.09.15)

香港からこんにちは

 

今年もいよいよやって参りました

縁起モノ、限定モノ、食べモノという、香港人が人生でこよなく愛するカテゴリーを全てクリアした、あの名物お菓子の季節が

 

中華圏の伝統的な祭事、中秋節 (Mid-Autumn Festival) の象徴、

月餅 (ユッベン)

 

ちょっと大きめのお饅頭のような月餅は、中秋節が近づくと、親戚友人知人の間で贈り合う、中華圏の伝統的な季節の贈呈品です。 

 

月餅をご紹介する前に、ほな中秋節とはなんぞや?を、ちょっとだけ

日本では「お月見」として知られていますが、中国には実はちょっと違ったお話があるんです。

ある所に、嫦娥 (じょうが) という美しく聡明な女性が、夫と幸せに暮らしていました。 ある日嫦娥は、夫から不老不死の薬を預けられます。その薬を飲んだ者は、仙人になり天に昇ることができるというのです。

嫦娥はそれを大切に閉まっていましたが、ある日泥棒が押し入り、その薬を盗られないようにと、とっさに自ら薬を飲んでしまい、天に昇っていきました。 そしてそれが、旧暦の8月15日、15夜の満月だったというのです

 

嫦娥を失った夫は嘆き悲しみ、毎年15夜の満月に嫦娥の好きだったロータス(蓮)や卵や果物などをお供えし、彼女を偲んだと言われています。

また、15夜の月に見えるウサギは中国では、嫦娥が飼っていたもので、嫦娥と一緒に天に昇り、不老不死の薬を臼で突いているのだそうです。

という、日本のお月見とはちょっぴり違う中秋節の背景。 

伝統や文化が中国から日本へ伝わる過程で、自然と話が変わっていったのか、それとも日本人が、自然を愛で楽しむことにフォーカスする平和なストーリーを好み、伝達の過程で故意に変わったのか、真意のほどは分かりませんが、中国にはこういった切なくロマンチックな神話が結構あったりします。 

 

とまぁ、中秋節のウンチク話はこの辺でお終いにして、この、ものすごく気になる月餅の中身、いったい何だと思います? そしてお味は?

 

今でこそ、こし餡、栗餡、ドリアン風味、ナッツとドライフルーツなどの西洋風味付けの月餅も出回り、極め付けは月餅アイスなるものも。 何でもありなようですが、最も伝統的な月餅の中身は、こちら。

ロータスとナッツのペースト、それに、鴨の塩漬け卵黄

どうですこの、明石家さんまと今田耕司がウーマン村本とムンバイでインドカレーを食べに行ったら的、唐突かつ皆目検討つかない感な組み合わせは。。。

 

肝心のお味は、、、

あまり深く追求せずに、一口だけ激甘塩の濃ゆいマリアージュを楽しみましょう、といったところでしょうか

 

実はこの月餅、香港人でも好き嫌いははっきり別れ、好きな人でも、この塩付け卵黄部分が好みという人と、ロータスペーストのみの部分が好みという二手に分かれます。 

 

とはいえ年一回、中秋節のこの季節にしかお目見えしない月餅は、実際のお味、好き嫌い、カロリー過多などどうであれ、それらを完全に超越した、中秋節の祝日に食べる古くから伝わる香港人のソウルフードなのです

現在は味もサイズもバラエティが増え、一口サイズの小さな月餅も多く出回っていますが、伝統的なものは直径約15cmの円形で、厚みも5cmほどとかなり大きいお饅頭サイズ。 家族や友人と取り分けて食べます。

 

満月を月餅の丸い形に例え、明るく丸い月は一族の繁栄と円満を意味するものだそう。

 

現在、中秋節で月餅を送り合う習慣は、中華圏の人々の面子を重んじる気質とも相まって、伝統から次第に社会現象に変化しているとも言われています。 

それでも、月餅を見るたびに中秋節のストーリーを思う時、透き通る秋の夜空にふと嫦娥の美しい気配を見るような気がするのです

 

JUN

香港STYLE Vol.32 風水⓷ 龍の舞 (2018.08.11)

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香港STYLE Vol.31 風水⓶ お婆ちゃんv.s.ハーバード (2018.08.04)

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