月別アーカイブ: 2018年8月

香港STYLE Vol.34 ミニバス⓶ きつねとたぬきと肺活量 (2018.08.25)

香港からこんにちは

 

赤いきつねと緑のたぬきこと、香港の「マルちゃん」、紅色小巴と綠色小巴。 

赤色と緑色の屋根を持つマイクロバスで、香港全土を縦横無尽に走り回る香港市民の頼れる足、ミニバスです。

 

定員16名。 始発駅、先頭から何度数え直しても17番め、数え間違いだったと直前に気付く17番め。。。 どちらにせよ、乗れないことには違いない、17番めの憂い

すぐ前にいた16人を乗せて走り去るミニバスをぼんやり眺めながら、いや、ちょっと待て

てことは、次のバスでは誰がどう数えても、自分は一番め。ドヤ顔で一番乗り、席の選択肢はどこでもオッケー16チョイス

さっきまでの、背中に雨雲かかってます感はどこへやら。 気分は一気に晴れ渡り、夏の男TUBE前田寸前

 

そう、ミニバス始発駅の17番めは、憂いどころか、キラッキラに前向きの17番め

、、、とまぁ、香港のきつねとたぬきは、こんなミジンコサイズの心の器を泣いて笑って満たしてくれるヤツなのですわ。

 

さて、香港ミニバスの乗り方ですが、きつねもたぬきも捕まえ方はいっしょ。

始発駅なら、ポケ〜っと待っていればいつかは必ず乗れますが、路線上のバス停ではそうはいきません。

「ワタシここにいま〜す、乗りたいんで〜すっ!」と手を上げて、鋼のように強い乗車意思を運ちゃんに知らせなくては止まってくれません

 

運ちゃんもプロ。 満席ですと、路上のバス停からラブコールを送る乗客に見える様に、ダッシュボードにのカードを置き、同時に、片手で「無理無理、悪りぃね」と、ロイヤルウェイブならぬ、つれないウェイブ👋🏻👋🏻で満席合図をしてくれるのですが、席がまだあると、減速しながらドアを開けて止まってくれます。

 

注: はい、この、減速しながらドアを開け‥‥云々、大抵のミニバス運ちゃんがよくやります。

要するに、停車したら間髪入れずに乗客を乗せたい=少しでも時間短縮したい、運ちゃんの都合最優先という理由から、減速しながらもうドアを開け、加速しながらやっとドアを閉めるという、でた、同時進行あっぱれ香港スタイル

でも高齢者や子供のことはちゃ〜んと見ていて、席に座るまで発進せずに待っていてくれます

 

さて、乗ってからが少し違うのが、きつねとたぬき。

まず、たぬき。 綠色小巴。

 

これは管轄が香港政府で、路線もバス停の場所も料金も全て決められています。  

料金は乗車時に払う前払い方式で、料金箱 (青丸) に小銭を入れるか、もしくはオクトパスカード (香港のほとんどの交通機関使えるプリペイドカード) の機械 (赤丸)に、ピッ

 

小銭で払う場合、運賃はオクトパスカード機械の上に表示されていますので、それで金額をチェック。

お釣りは出ませんので、ぴったりの小銭がなかったら、減速しながらドアを開けちゃう運ちゃんへの敬意を表して、多めに払うのが暗黙のルール。 運ちゃん > 乗客の構図は永遠です

多めとはいっても、最長で乗っても 6.5香港ドル前後 (約92円) と、もともとが目くじらを立てるような金額ではないですしね

 

では、きつね。 紅色小巴はというと。。。

これは管轄が、香港マフィア 

映画などエンターテインメント業界にも強いパイプを持ち、全世界に散らばる構成員は6万人とも言われる、潮州系ルーツの香港マフィア「新義安」が紅色小巴を牛耳っているというのは、香港人なら口にせずとも知っている、公然の秘密

 

ちなみに、潮州系華僑は華人の中でも独特のビジネスセンスに長けていると言われ、アジア一の大富豪、李嘉誠 (Li Ka Shing) や、人気大物歌手、鄭秀文 (Sammi Cheng) なども潮州系香港人です。

 

はい、このきつねこと、紅色小巴。 運賃は基本的に自由設定。 路線は、始発地点と終点のみが決められており、駐停車禁止エリア以外では、どこでも乗降車できます。 乗車時に運ちゃんに降りたい場所を告げ運賃を聞き、降車時に運ちゃんに支払います。  

お釣りはもらえますが、たったの5ドル運賃を支払うのに500ドル紙幣などは、間違っても出してはいけません。 そんなことでもしたら、ドスの効いた声で罵倒されるのは必至 気をつけましょう。

 

料金箱はなし。 決まった料金設定もなし。 でも、紅色小巴で10香港ドルを超えることはまずないですし、ぼったくるようなことは決してありません。 香港マフィアはそんな、器ちっさ〜なことは致しません

 

 

きつねもたぬきも、運ちゃん達の広東語しか解さない率100パーセント (て全員かいっ)。 

そのため、乗り降りは全て運ちゃんとの広東語による直接交渉になります。

 

紅色小巴は特に、自分の行き先を的確に伝えられる、高度な広東語コミュニケーション能力が必要で、香港の交通機関では難易度トップレベル。

降りたい駅や場所が近付いて来たら、運ちゃんに、

「有落(呀)、唔該!(Yau lok (ah)、 mm goi!)」

「降りるぜ、ヨロシク!」

と大声で主張 

止まれと言われても、どこでもすぐに止められるわけではないため、運ちゃんの声かけのタイミングも大事。 イラッとされないためのベストタイミングは、信号待ち中や降りたい200〜300m手前になった頃。

 

ローカル的ミニバス攻略法、それは十分な土地勘、広東語コミュニケーション能力、それに、大声が出せる肺活量、その3点が必須条件という、ちょっぴり変わった香港スタイルでした

JUN

 

補聴器にこにこ通信Vol.1

こんにちは!

今月から、「補聴器にこにこ通信」を開始いたしました。補聴器に関連する話題を、当店の認定補聴器技能者の3名でお伝えしてまいりますので、どうぞご覧ください。

香港STYLE Vol.33 ミニバス⓵ そんな日もあり (2018.08.18)

香港からこんにちは

 

龍が飛び交うと言われる風水都市、香港。

確かにこの街には、まさに今、龍が駆け抜けたような風を感じる、不思議な瞬間があるような気がします。

この街で駆け抜けるのは、龍だけではありません。 「駆け抜ける」というよりは「すっ飛ばす」と言った方がぴったりではありますが、香港市民にとって日々の生活で無くてはならないもの。 それが、

 

ミニバス

広東語で、小巴 (シウバ)

 

広東語のイントネーション並みに隆起に富む香港の地形を知り尽くし、大衆食堂、茶餐廳の客回転よりも合理的で、香港名物、姿勢と足の速さが自慢の香港人お婆ちゃん達の歩速より速い (当たり前か)、この香港ミニバス

複雑な路線形態なうえ、乗車には高度な広東語力と土地勘と度胸が絶対条件。 よって利用者はほぼ全員地元民というローカル度満載の、その濃さ宮川大助・花子の漫才を見たあとの様な充実感

 

MTR (香港の地下鉄) や、ダブルデッカーバス (2階建路線バス) が通らない場所を中心に、香港の隅々までを網羅する「16人乗り立ち乗り禁止」のマイクロバスで、文字通り、香港市民のどこでもドアになってくれる強〜い味方なのです

2017年7月からは、路線によっては19人乗りにアップグレードの (って、3席増えただけかい でも車椅子にも優しいの) 、香港の下町には不釣り合いなくらい小綺麗な新ミニバスも登場し、就航以来一度も車内清掃したことなさそうなのが誇り (いや、埃) だった、愛すべき旧型香港小巴からの世代交代が徐々に進められています。  

それはそれでちょっぴり寂しいのは、きっと私だけではないはず

 

ミニバスの種類は2つ。

マルちゃんの赤いきつねと緑のたぬ、、、じゃなくて、赤い屋根と緑の屋根の2種類。 

紅色小巴 (ホンセッシウバ)

 

綠色小巴 (ロッセッシウバ)

 

車体は両方ともクリーム色ですが、タイヤとヘッドライトとナンバープレート、要するに隠したら走れないか違法になる部分以外は、車体全面に広告が施されているため、元々の色であるクリーム色は、ほぼ見えません

ですので、頭で見分けます

 

さて、このきつねとたぬき、何がどう違うかというと。。。?

① 決まった路線、停留所があるかないか

② 車内に料金支払い箱があるかないか

③ 運営が香港政府か香港マフィアか

・・・という、たったのこれだけ

香港の「たったこれだけ」は侮るなかれ。 乗車前の心の準備とルートの予習及び段取り、そしてアンパンマンほどの己の勇気を試される、運命のきつねとたぬき、もとい赤と緑のミニバスなのです。

 

先の3つの違い以外は、使い勝手はきつねもたぬきも基本的に同じ。

2階建大型バスが停留所ごとにバス停名を、広東語、北京語、英語の順でアナウンスし車内前方の電光掲示板にも表示してくれるのに対し、ミニバスはそんなの一切なし

 

また、ミニバスは運ちゃんの城も同然。 食べ終わったお弁当の空箱に積み重なった1週間分の新聞に傘、好みの歌謡歌手の写真や中国戯曲の公演ポスター、龍の絵柄がド派手なタンブラーに、手がゆらゆら揺れる金色招き猫の置物。。。

そんな運ちゃん家のリビングがそのまま移動してきたかのような運転席周辺に加え、香港電台 RTHK (香港のラジオ局) を大音量で流しながら、急ブレーキ急アクセルですっ飛ばしていきます

 

旧型ミニバスの乗客定員は16人まで。 満席になるとフロントガラスにのカードが表示され、どこかで乗客が降りて席が空くまで、停留所に人が待っていても素通りしていきます。 

又、始発のミニバスターミナルでは、きちんと列を作って並ぶ良い子の香港人ですが、何度数え直しても自分が先頭から17番目だと知った時のショック。。。

 

数えるとどうやらぎりぎり16番目。 「ラッキー 私乗れる、あなた乗れない」と有頂天になりながらすぐ後ろの人に無言の優越感ビームを送り、余裕かましていざ乗ろうとしたら目の前でドアが勢いよく閉まり。 。。

呆然としながら、それが単なる自分の数え間違いだったという現実に気付き、さっきまでのビームは何処へやら、心折れる寸前に。。。

って大袈裟な

 

そんな香港人の悲哀も、ミニバス、きつねとたぬきが織りなす日々のドラマであり、香港スタイルなのです。

 

次回は、ちょっぴり難易度高めローカル的ミニバス攻略法をご紹介しますね

JUN

 

 

香港STYLE Vol.32 風水⓷ 龍の舞 (2018.08.11)

香港からこんにちは

 

中国5000年の歴史によって培われてきた、環境学でもある風水。

 

中国本土では文化大革命で否定され、一時途絶えてしまった風水ですが、香港では脈々と引き継がれ、現在でも香港人の日常生活のあらゆる場面で、密接に関係しています。

 

街全体が世界でも最強の風水都市と言われる香港は、龍が縦横無尽に飛び交う場所と言われています。 龍とはすなわち、よい「氣」の流れのこと。

古くから龍を尊く重んじる風水では、西の方角が龍が水を飲みに来るところとされています。 古来の中国人はきっと、西の空に高く舞う龍を、幾度となく見たのかもしれませんね

 

香港とマカオが自動車専用の海上橋 (港珠澳大橋: 今年末開通予定。全長55kmの海上橋では世界一の長さ) で一直線に繋がることのできるこの時代、橋をかけようと思えば容易に出来るはずのヴィクトリア湾に決して橋を作らないのも、風水では、ヴィクトリア湾が九龍半島から香港島へ向かう龍の水飲み場である「龍穴」と言われているからなのです。

つまり、香港全土を自由に駆け巡る龍脈 (よい氣の流れ) を、橋によって遮断しないように、流れを滞らせないように、との風水の考えなのです。

 

このように、流れる「氣」を最優先に考えられ工夫された建物や施設のデザインを、香港ではよく見かけます

例えば、九龍サイドのハーバーフロントに建つホテル、インターコンチネンタル香港。

 

1階ロビーは、ヴィクトリア湾と香港島に向いて、床から天井まで全面総ガラス張りになっています。

香港島の摩天楼が、ガラスの向こうから迫ってくるかのようなダイナミックな景色を楽しめますが、このデザインはなにも、ホテルの観光名所狙いのためではないのです。

中国大陸からヴィクトリア湾を経て香港島に舞い込む龍の通り道を遮らないため、氣を通すためのガラス張の空間なのだそうです。

 

香港ディズニーランドもその一つ。

氣の流れが海に出てしまわぬよう、駅からパークエントランスまでのアプローチに、カーブが付けられています。

また、開園まであと5ヶ月と迫った最終段階に来て、風水師の龍脈関連の指摘により、エントランスの向きを当初の設計から12度動かすという、大幅な変更を決定、決行したという逸話も。

時間的に不可能と思われる無理難題でさえも、風水とあらば他所や関係者を大いに巻き込みながら、即行動しやり遂げてしまうのが香港人のパワー、そしてこれが香港スタイル

香港ディズニーランドは、ホテル、レストラン、お店のレジの配置に至るまで、風水の法則を取り入れて設計されているそうです。

 

他にも香港には、建物の真ん中に大きな穴が空いているものや、波打つような外観のマンションもよく見かけます。 これも単なるデザインなどではなく、流れる龍脈を遮断させないための風水設計なのです。

香港島南部の超高級住宅リゾート地、リパルスベイ (淺水灣/Repulse Bay) に建つ、高級マンション。

 

香港島の高級住宅街ミッドレベル (半山區/Mid-Levels)、ヴィクトリア・ハーバーの大パノラマを一望できる超ラグジュアリーな高級マンションにも龍脈のための穴が。

 

海の眺望が素晴らしい香港島西南部の高級住宅地、サイバーポート (數碼港/Cyberport) にある超高級コンパウンド。

 

などなど、建物の真ん中部分に大きな空間が開けられ、氣の流れを遮らない設計になっています。

 

また風水では「水=財」と扱われ、特に動の水はよい氣を集めると言われています。 地面から高く丸い形の噴水は「大成の相」とも言われ、物事が全てうまくいくとされています。

 

面白いことに、西洋の噴水は水が外側に向かって出ますが、風水は逆。  水を内側に向けて流すことによって、そこに富や財が集まり繁栄するというのが風水の考えなのです。

 

香港人にとって風水は、単なる占いやおまじないなどではありません。

中国古来から伝わる陰陽思想の中で、人々の守るべき生活ルールのようなものとして、また、物事を大局的に見るため、己がするべき努力の方向性を知るための道しるべとして、人々の人生に深く関わりを持つ、香港人の大切な不変のルーツなのです

JUN

 

香港STYLE Vol.31 風水⓶ お婆ちゃんv.s.ハーバード (2018.08.04)

香港からこんにちは

 

香港島のスカイラインを形成する、金融街の高層ビル

ヴィクトリア湾を挟んだ対岸、九龍サイドから見ても、すぐ後ろに迫るヴィクトリア・ピークから見下ろしても、圧倒的な存在感と、立ち昇る龍が見えるかのような躍動感のある、国際金融都市。

と同時に、どこか不思議な静寂感もある、それは摩訶不思議な街でもあります。

 

古来から伝わる風水を重んじ発展を遂げてきた風水都市、香港。  何よりも「氣」の流れを大切にし、風水の考えに沿って社会が機能している伝統的な一面も、この街にはあります。

風水をないがしろにすれば、仕事も人生もうまくいかないことを直感で理解している香港人にとって、風水は生活の一部であり人生の指針でもあり、彼らのアイデンティティそのもの、といってもいいのかもしれません

 

 

 

香港では、ビルや施設の設計段階で、依頼主、コンサルタント会社、設計士、風水師の意見が衝突した場合優先されるのは、200%風水師の意見

 

鶴の一声ならぬ、風水師の一声が、プロジェクトに関わる頭脳明晰ハーバード級、建築構造力学オタクの数字を時にひっくり返し、大幅な設計変更をさせてしまうのですから、香港の風水信念たるや、DNAレベルで不屈

大きなプロジェクトの場合、新しい建築予算の約10%もの費用が風水に充てられるそうで、風水師へのコンサルタント料金と、実際に風水調整する時の膨大な道具・資材・人権費のためなのだそうです

 

香港には、風水師のアドバイスによる設計変更、施工後の増設、改築などの風水話にはこと欠きません。 普段は鼻っ柱の強い香港人が、こと風水となると従順になり「Noと言わない香港人」に。 こんなところも、香港スタイル

 

簡単に設計変更、増設と言っても、親子丼に入れる葱の種類や鶏肉の量を変えるのとは訳が違います 他の箇所の設計への影響も含めて、かなりの負担なはず

設計士はもとより、依頼主や建築エンジニア、コンサルタント会社も大変な思いをするのは目に見えているのに、それでも風水師のアドバイスを受け入れるという、風水を前にしてぐうの音も出ないハーバード達

 

というのはさておき、こんな話も。。。

香港島で最も賑わう繁華街の一つ、ワンチャイ (灣仔 / Wan Chai) 地区に、白い円筒型の高層ビルがあります。

 

ホープウェル・センター (合和中心 / Hopewell Centre) という、ショッピングセンターやオフィスを備えた複合施設です。

1980年に完成の、香港でも早期に建設された高層建築のひとつで、中国銀行タワーが完成した1990年までは、香港で最も高いビルだったそう。

ところがこのホープウェル・センター、完成後、風水師によりある指摘が。。。

 

ビルの外観が、キャンドル (ろうそく) に似ていることから、不運や火を連想させ不吉だというのです

風水では、火はネガティブなパワーとされており、金運やすべての福を燃やしてしまうマイナスの「氣」。

そこでどうしたかというと、ビルの持つ火のパワーに対抗するため、最上階にスイミングプールを増設。 そう、火を消すために水を用意したのです 

ちなみに風水で「水」は、金運や経済的な繁栄をもたらす鍵とされている、最強の「氣」

「風水」という概念に「水」が使われているくらい、水はポジティブなパワーで、水の設備や流れが収入や資産を増やすと言われています 

ということで、ホープウェル・センター最上階のスイミングプール増設は、単純にマイナスパワーの火を消すという意味合いだけでなく、ビルの経済的発展の気運も込められていたのです。

 

香港の繁栄は、地理的な幸運や、早くから西欧列強と関わらざるを得なかった歴史の運などではなく、ハーバード頭脳だって敵わない、数千年前に生きたお婆ちゃんの知恵袋的古来の学問「風水」を今も守り抜く、彼らの信念によるところも、大きいのかもしれませんね

JUN