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香港STYLE Vol.48 オークションとアートトーク (2018.12.1)

香港からこんにちは

 

スイスで行われたクリスティーズ・ヨーロッパのジュネーヴ・オークションに続いて、Christie’s Hong Kong (佳士得 香港) オークションが行われました。

 

11月23日〜28日、場所は香港島の Wan Chai (灣仔) 地区にある Hong Kong Convention and Exhibition Centre (香港會議展覽中心) です。

毎年香港オークションの会場となる、通称コンヴェンション・センターは、国際商業展示会や国際会議、大きなセミナー、香港政府の行事やセレモニーなどにも使われる複合施設。 1997年、香港の中国返還式典もこちらで行われました。

 

オークションは、ジュエリー、宝石、時計、中国の古典美術や工芸品、陶器、日本美術、西洋美術、現代アート、ワイン、それに香港ならでは、Hermès のハンドバッグ (プレシャススキン素材や世界で一つしかないオーダーものデザインなど、希少価値の高いもの限定) など、各分野ごとに細かいスケジュールが組まれます。

 

また期間中に、クリスティーズがオークション出品物に関連する専門家達を世界中から招待し、セミナーやパネルディスカッション形式のアートトークを毎回いくつか行うのですが、 これがまた、実に大変に面白いのです。

 

これらはオークションの合間に行われるのですが、どこどこ大学何ちゃら教授の、机上の独断美術史講義なんかを聞くより、2000倍面白い!

なぜって?   それは簡単。

 

ずばり! 

 

このアートが、お金と連動しているから。 

 

美術品オークションは、れっきとしたビジネス。出品物に関わってきた人、時間、歴史、全てひっくるめて値段が付けられ、取り引きされ、投資の対象にもなるのです。

 

現在進行形の美術品市場を、多角的に知り尽くしたクリスティーズのスペシャリスト達が、さらにその道のザ専門家から、時にユーモアたっぷりに引き出す話は、現実的で実用的で刺激的。

目の前のたった一枚の、百何十億という夢のような絵画から、西洋史と東洋史の点と点が繋がり、思わずポンっと膝を叩きたくなるような瞬間にも出会うのです。 

そんな爽快さこそも、美術品オークションビジネスの醍醐味なのかもしれませんね。 

 

 

芸術も科学も医学も、人間がやることにさほど違いはないと思っています。 

どんなに崇高ぶっていても、偉そうなことを言っても、お金が直結するから真理が見える。

そんなクールで当たり前のことを気づかせてくれるのが、オークションのおもしろさなのです。 

 

こちらは、24日に行われたヴァン・ゴッホの絵と生涯についてのパネル・ディスカッション。

左から順に、このディスカッションの司会、クリスティーズ・アジア取締役 Elaine Kwok 氏 、ヴァン・ゴッホ美術館館長 Axel Ruger 氏、クリスティーズ・グローバル会長 Jussi Pylkkanen 氏と、もう一人、ヴァン・ゴッホ美術館主任研究員 Teio Meendendorp 氏の4人で、大変興味深い話を聞くことができました。 

ヴァン・ゴッホは実は画家ではなかった?!件、日本文化の持つ繊細美への憧れが強過ぎて、それを求めて南フランスへ移住した?! (けれども全然違った件。。。

 

さて今回、香港オークションのスターセールは、中国古典美術の最高峰、Su Shi (蘇軾/1037〜1101) による 「Wood and Rock」(木石圜)。

 

落札価格 HK$463,600,000 (約67億2千万円) なり。 

 

Su Shi は中国北宋代の政治家であり、詩人、作家、書家、画家といういくつもの顔を持った、中国のレオナルド・ダ・ヴィンチとも呼ばれる人物です。

 

また、ジュエリー部門では、21石のカシミール・サファイアと、23石のダイヤモンド、合計109.98キャラットのネックレス「The Peacock Necklace」が注目されていまた。

 

カシミール・サファイアそのものが大変希少なうえ、21石の色をここまで揃えることのできたネックレスは奇跡に近く、こういった色揃えだけでも100年はかかるでしょう。

 

 

滑らかなヴェルヴェットの手触りを思わせるような深いブルーの輝きに、ふわっとシルクをかけたような、なんとも言えない独特の色とオーラを持つカシミール・サファイア。

見惚れるほシンプルで、見惚れるほど美しく、見惚れるほど知的な「The Peacock Necklace」。

 

落札価格は,、HK$116,537,500 (約16億9千万円) 。

カシミール・サファイアとしてはオークション史上、再び世界最高額を記録しました。

 

 

優れたアートや素晴らしい宝石は、限られたごく一部の才能や、自然が織りなす奇跡の積み重ねによって作られるもの。けれども、それらの作品は私達万人に開かれています。

 

オークションハウスを通じて受け取るもの、それは精神的な富の蓄積であり、もしかしたら、一生をかけて手に入れていく真の豊かさなのかもしれませんね。

 

JUN

 

香港STYLE Vol.47 オークションで出会うストーリー (2018.11.24)

香港からこんにちは

 

先日スイスのジュネーヴで行われた、Christie’s のジュエリー・オークション Magnificent Jewels。

世界中の顧客から集められた300点以上の壮麗な宝飾品やジュエリーが競売にかけられ、アートとビジネスが融合した、エキサイティングな一夜となりました。

 

その夜のスターセールの一つが、18.96ctの大粒ファンシー・ヴィヴィッド・ピンクダイヤモンド The Winston Pink Legacy 。 

キャラット単位 260万ドル (約3億円) という、ピンクダイヤモンドについた per carrat 価格としては世界最高額を記録し、オークション会場が大きな賞賛の拍手に包まれました。

 

 

 

ジュエリーオークションの中で最も格の高いMagnificent Jewels 。 競売にかけられる作品はすべて、世界的に希少価値のあるものばかりです。

国宝にも匹敵するほどのミュージアムクラス・ピースが、次々と入札され落札されていくのがジュエリーオークション。

 

オークションには、「オークション・カタログ」という、出品される作品全てを紹介した分厚い本が、オークションの数ヶ月前に必ず発行されます。

カタログには、ロット番号順に出品作品の写真、詳細と説明、そして落札予想価格が記載されます。 

 

 

どうかすると、その辺の美術書などより、よほど詳しく分かりやすく書かれている、と私は思っているオークション・カタログ。  

なにせ、オークションハウスを支える各分野の「スペシャリスト」と呼ばれる、超マニアックなオタク集団、、、いや (笑)、専門家集団が作るカタログです。

オークションハウスの「スペシャリスト」。 美術市場でこれほど頼りになる人達はいないと私は思っていますし、はっきり言って、気難しいどこかの西洋美術史の教授が書いた、使えないウンチクだらけの美術書などより、よっぽど読んで楽しく見て楽しく為になる、、と個人的に本気で思っているのが、オークション・カタログです。

 

そしてなにより、カタログに載る100年200年、もによっては数百年という歴史を持つ国宝級の出品作品が、美術館に鎮座し有り難がられることなどなく、時代を超えて人の手から手へ、市場を介し世俗にまみれ流通してきたという、なんともダイナミックな事実。

そしてこれからも所有者を変えて市場へ流通し、歴史を刻みながら生き続けるであろうという事実が、作品にある種の現役感と生命感を与え、それが見る者を魅了するのかもしれません。

 

さて、オークション・カタログに必ず明記してあるのが、落札予想価格。

入札者が入札価格の目安とできるように、オークションハウスのスペシャリスト達が付けるもので、入札スタートは通常、予想落札価格の最低ラインから始まります。

 

実はこの落札予想価格、1970年代まではオークション・カタログには一切載っていませんでした。 

どういうことかと言うと、つまり、作品の価値を自分で判断できない人間はオークションの参加資格なし、ということ。

オークション発祥があのお国と聞けば、妙に納得 (?!) のちょっぴり高飛車な、、、いや、高貴なお話、、、でしょうか。笑

しかし、それではマーケットが広がらないから、カタログに価格を載せてはどうかという提案が、当時出たそうです。

が、またそこからが大変。  価格を明記するなどとは美術作品への冒涜である、との大議論に発展! 

結局、ロット番号の横に価格を記したリストを作成し、カタログに折り込みで入れるという方法で決着。 その後も少しずつ改良を重ねながら、現在のスタイルでのオークション・カタログが出来上がったのです。

 

 

それでも、真のコレクターは必ず、現物を見てから入札を決めます。  

ジュエリーや美術品は大きな買い物であり、そのために、オークションハイライトの作品を、コレクターが多くいる都市に回し、プレビューを開くのです。

プレビューでは、どこそこのジュエリーアートディーラーが Van Cleef & Arpels 1924年製のロングネックレスを熱心に見ていたとか、ある有名コレクターが、ガラスケースから出してもらった JAR のブローチの裏側を、ルーペで丹念に見ていたとか、そういった話からスペシャリスト達内で落札価格が予想されることもあるそうです。

 

 

 

 

オークション・プレビューで出会う様々なストーリーを持つ宝石たち。

それらは現在進行形の生きたアートであり、そこで手に取ったジュエリーが、私に多くのことを語りかけ、精神的な富とは何かを実感させてくれるのような気がするのです。

 

JUN

 

香港STYLE VOL.46 The Winston Pink Legacy (2018.11.17)

香港からこんにちは

 

11月13日、スイスのジュネーヴで、世界2大美術品オークション会社の一つ Christie’s (クリスティーズ) によるラグジュアリーオークション、Magnificent Jewels (マグニフィセント ジュエルズ) が行われました。

 

各部門トップエンドを集めた格の高いオークションは必ずイブニングセールとなり、Magnificent Jewels は、ニューヨーク、香港、ロンドン、ジュネーヴの各都市で、毎年5月と11月に行われます。

オークションでは、毎回多くのドラマが生まれますが、今回も期待を裏切らない エキサイティングなものになりました。

 

18.96キャラットという稀に見る大粒の、ファンシーヴィヴィッド・ピンクダイヤモンドリング「The Pink Legacy」が、予想落札価格 $30〜50million (約34〜57億円) で出品されたのです。

 

この「The Pink Legacy」の出品者については、クリスティーズは徹底した守秘により、今回もプライベートオーナーとしただけで身元は一切公表していません。  

分かっていることは、ロンドンに本社を置くダイヤモンド鉱山、流通、加工、卸売会社「The De Beers 」(デビアス) グループを経営する Oppenheimer (オッペンハイマー) 家が、かつて所有していたことがある、ということだけ。

 

希少なカラーダイヤモンドの中でも、極めて鮮やかな色合いを持つもののみに鑑定される「Fancy Vivid」というカテゴリーのカラーダイヤモンド。 それは、色付きダイヤモンド約10万個に一つとも言われています。 

 

さらに、希少なピンクダイヤモンドで10キャラットを超えるものは極めて稀で、「The Pink Legacy」のような19キャラット近いファンシーヴィヴィッド・ピンクダイヤモンドという宝物の様な出品は、長いオークションの歴史でも過去に例がありません。

 

通常、目視では見えない極々小さな不純物や曇り、僅かに別のカラーが混ざっていることが多いダイヤモンドにおいて、不純物を一切含まず、ここまで高い純度と鮮度と透明度を持つ「The Pink Legacy」。

それは、この石が数億年前に地球内部で生み出された時、通常のダイヤモンドが作られる以上の高温度と高圧力が、瞬間的にであれかかったという奇跡の証明なのです。

 

また、ため息が出るほど完璧で美しい、クラッシックなカット。

 

カラーダイヤモンドにおいても、ファセット数を多くすることで、より石の輝きを引き出すよう研磨されることが多いのですが、「The Pink Legacy」は、石そのものが持つ化学的にも驚くべき純度と透明度の高さを生かしクラッシックなカットが採用されています。 それがまた、この石の奥深い色合いと相まって、洗練と品格となっているのですね。

 

全てが緻密に計算された最高レベルの研磨を施す、ダイヤモンドの研磨職人。 私は、この人達以上に畏敬の念を抱く人達はいないかもしれません。

「The Pink Legacy」は、人類、そして地球の「資産」と言っても、決して大げさではないと思うのです。

 

今回のような大きなオークションの前に必ず行われるオークションプレビュー。 ニューヨーク、香港、ロンドン、ジュネーヴという各都市で「The Pink Legacy」は、熱心なコレクターや専門家達を多いに魅了しました。

今回の Magnificent Jewels オークション会場は、レマン湖のほとりに建つ1834年築の由緒あるホテル、Four Seasons Hotel des Bergues Geneva (フォーシーズンズ オテル デ ベルグ ジュネーヴ)。

300点以上の希少なデザインジュエリー、ダイヤモンド、宝石、パールなどが出品され、「The Pink Legacy」以外にも、資産価値の高いジュエリーが数多く多く出品されました。

 

いよいよ、オークションも終盤。

Lot 311「The Pink Legacy」

 

「Lot number three hundred and eleven. Ladies and gentlemen, The Pink Legacy Diamond.  At 24 million francs… 」

 

この夜のオークショニア、クリスティーズ国際事業責任者 ラウル・カダキア氏が、落ち着いた口調で滑らかにロット番号311の競売をスタートしました。 オークションの歴史に残る「The Pink Legacy」です。

 

CHF 24million (約27億円) から始まった入札は、あっという間に予想落札価格の30億円台に入り順調に上がり続け、競売開始からわずか5分。。。

会場にハンマーの音が響き渡り、大きな拍手に包まれました。

 

落札価格、CHF 50,375,000 (約57億円)。

キャラット単位 CHF 2,656,909 (約3億円) という、ピンクダイヤモンドについたものとしては、世界最高額での落札となりました。 

 

 

落札したのは、アメリカ高級宝飾ブランド Harry Winston (ハリー・ウィンストン)。

これはクリスティーズではなく、ハリー・ウィンストン社が公表したもので、The Pink Legacy の名称はすぐさま「The Winston Pink Legacy」(ウィンストン・ピンク・レガシー) と改められ、新しい所有者に渡ったのです。

 

間違いなく、世界最高級のダイヤモンド「The Winston Pink Legacy」。

 

地球の資産とも言える「The Winston Pink Legacy」は、時代を超えて、見る者手に取る者を幸せにし、地球の奇跡が生み出した完璧な純度を持つ石の中に、人類の歴史を携えながら、これからさらにその価値は上がっていくことでしょう。

 

JUN