香港STYLE Vol.78 海とサファイアとコンテナ船


香港からこんにちは

香港で、私が一番に心惹かれる光景があります。 それは、摩天楼と光の空間芸術、ビクトリアハーバーの100万ドルの夜景でもなく、アジアのディープ&チープ、何でもアリが面白い旺角 (Mong Kok) のストリートマーケットでもなく、大人数でワイワイ、週末の飲茶レストランの明るい喧騒でもなく、、、

 

香港の海

 

いくら考えても明確な答えは出てきませんが、なぜにこうも、香港の海が好きなのだろうかと思いを巡らせるほど、これはもうきっと感覚で好きなのだろうと思うのです。

しかも、水平線以外な〜んにも見えない、天国に一番近いようなリゾートの海、という景色より私が好きなのは、ずばり、、、

 

交通量の多い、海

波しぶきをあげて進む、離島を結ぶ高速フェリー。 埋め立て用の土を運ぶ三角塔を乗せた運搬船。 シネマルームやジムまで付いた、贅を尽くした個人所有の大型クルーザー。 数千個もの大きなコンテナを運搬する全長400メートル近くもある巨大コンテナ船。 ぷかぷか浮かぶ地元の人達の無数の小さなフィッシングボート。。。

 

それら大中小様々な船舶が、目の前をひっきりなしに行き交う、物流と人流の香港の海。  そんな光景が大好きなのです。 

 

特に、海上をいく大型コンテナ船を観察するのは、私のオタク的隠れ趣味といってもいいくらいで (言ってしまったので、もう隠れてませんが)、南シナ海の航行ルートから青馬大橋 (Tsing Ma Bridge) をくぐり、波風一つ立てずに悠々と進む大きなコンテナ船と海の風景は、実際に目にするたびに、なぜか心震えるほどの美しさを感じるのです。

 

前日までに全ての積荷を終え、早朝一番で出港したコンテナ船が、朝日を受けながら真っ青な大海ルートに出て行く悠然とした後ろ姿。

夕方には、日没前の入港に間に合った安堵感を称えて (キャプテンの気持ち?)、夕陽に照らされながら香港入りする黄金色の大型コンテナ船と、遠目にはまるでパヴェダイヤのようにきらきら輝く香港の海。

 

船舶の行き交う海が見える場所を特に好むからでしょうか。 自然と海に調和する色、たとえば、紺碧色、翠色、白、赤といった大人のマリンカラーが、今までの私のベーシックカラー、北ヨーロッパ的なオフホワイトや黒、紺、ベージュ、グレージュといった色に加わるようになったのです。

 

紺碧色

 

紺色とも藍色とも違う、深く、でも深すぎない情熱と知性をバランスよく兼ね備えた色ではないでしょうか。 

 

一瞬で何も見えなくなるほど周りが真っ白になる激しいスコールの後。。。

目の前に再び姿を現す香港の海は、より深い紺碧色を湛え、

その色彩の変化は、期せずしてブルーサファイアやカシミールサファイアを連想させるようで、実は私が香港で最も「好き」を感じるひとときなのです。

 

 

サファイアは、産地が重要な宝石の一つです。

小粒に研磨され、パヴェセッティングなどのジュエリーに使われる多くのサファイアは、オーストラリアやカンボジア、ナイジェリア産。

 

大粒で美しく最高級のサファイアの主産地は現在、ミヤンマー、スリランカ、マダガスカルとなっています。

 

大粒の無処理のブルーサファイアは、本当に力強い美しさを秘めていて、スコールの後の香港の海の色彩のようなのです。

 

ブルーサファイヤの中でも極めつきの最上級『カシミールサファイア』は、インドとパキスタン国境付近にあるカシミール地方、標高4000メートルの高地バッダール渓谷で、山崩れによって露出した岩壁のくぼみから、1880年代始めにたまたま発見されました。

その後僅か数年で枯渇し、1887年までには最上質の大型結晶のほとんどは採りつくされたと考えられている、幻のサファイアです。

ヴェルヴェットのような、シルクのヴェールが石の中にかかっているような、なんともいえない魅力的なブルー。

このカシミールサファイアは、今ではオークションなどで目にすることができるのみの、大変希少価値のある宝石なのです。

 

人間のDNAに刻み込まれた記憶とは不思議なもので、全ての生物の命が海から始まったように、また、宝石となる鉱物が地球から生まれたように、原点回帰ということに、どこか無条件で惹かれるものなのかもしれないですね

 

JUN