香港STYLE Vol.37 中秋節の気配 (2018.09.15)

香港からこんにちは

 

今年もいよいよやって参りました

縁起モノ、限定モノ、食べモノという、香港人が人生でこよなく愛するカテゴリーを全てクリアした、あの名物お菓子の季節が

 

中華圏の伝統的な祭事、中秋節 (Mid-Autumn Festival) の象徴、

月餅 (ユッベン)

 

ちょっと大きめのお饅頭のような月餅は、中秋節が近づくと、親戚友人知人の間で贈り合う、中華圏の伝統的な季節の贈呈品です。 

 

月餅をご紹介する前に、ほな中秋節とはなんぞや?を、ちょっとだけ

日本では「お月見」として知られていますが、中国には実はちょっと違ったお話があるんです。

ある所に、嫦娥 (じょうが) という美しく聡明な女性が、夫と幸せに暮らしていました。 ある日嫦娥は、夫から不老不死の薬を預けられます。その薬を飲んだ者は、仙人になり天に昇ることができるというのです。

嫦娥はそれを大切に閉まっていましたが、ある日泥棒が押し入り、その薬を盗られないようにと、とっさに自ら薬を飲んでしまい、天に昇っていきました。 そしてそれが、旧暦の8月15日、15夜の満月だったというのです

 

嫦娥を失った夫は嘆き悲しみ、毎年15夜の満月に嫦娥の好きだったロータス(蓮)や卵や果物などをお供えし、彼女を偲んだと言われています。

また、15夜の月に見えるウサギは中国では、嫦娥が飼っていたもので、嫦娥と一緒に天に昇り、不老不死の薬を臼で突いているのだそうです。

という、日本のお月見とはちょっぴり違う中秋節の背景。 

伝統や文化が中国から日本へ伝わる過程で、自然と話が変わっていったのか、それとも日本人が、自然を愛で楽しむことにフォーカスする平和なストーリーを好み、伝達の過程で故意に変わったのか、真意のほどは分かりませんが、中国にはこういった切なくロマンチックな神話が結構あったりします。 

 

とまぁ、中秋節のウンチク話はこの辺でお終いにして、この、ものすごく気になる月餅の中身、いったい何だと思います? そしてお味は?

 

今でこそ、こし餡、栗餡、ドリアン風味、ナッツとドライフルーツなどの西洋風味付けの月餅も出回り、極め付けは月餅アイスなるものも。 何でもありなようですが、最も伝統的な月餅の中身は、こちら。

ロータスとナッツのペースト、それに、鴨の塩漬け卵黄

どうですこの、明石家さんまと今田耕司がウーマン村本とムンバイでインドカレーを食べに行ったら的、唐突かつ皆目検討つかない感な組み合わせは。。。

 

肝心のお味は、、、

あまり深く追求せずに、一口だけ激甘塩の濃ゆいマリアージュを楽しみましょう、といったところでしょうか

 

実はこの月餅、香港人でも好き嫌いははっきり別れ、好きな人でも、この塩付け卵黄部分が好みという人と、ロータスペーストのみの部分が好みという二手に分かれます。 

 

とはいえ年一回、中秋節のこの季節にしかお目見えしない月餅は、実際のお味、好き嫌い、カロリー過多などどうであれ、それらを完全に超越した、中秋節の祝日に食べる古くから伝わる香港人のソウルフードなのです

現在は味もサイズもバラエティが増え、一口サイズの小さな月餅も多く出回っていますが、伝統的なものは直径約15cmの円形で、厚みも5cmほどとかなり大きいお饅頭サイズ。 家族や友人と取り分けて食べます。

 

満月を月餅の丸い形に例え、明るく丸い月は一族の繁栄と円満を意味するものだそう。

 

現在、中秋節で月餅を送り合う習慣は、中華圏の人々の面子を重んじる気質とも相まって、伝統から次第に社会現象に変化しているとも言われています。 

それでも、月餅を見るたびに中秋節のストーリーを思う時、透き通る秋の夜空にふと嫦娥の美しい気配を見るような気がするのです

 

JUN