下鴨神社も!

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直前の記事で、京都御苑に隣接する梨木神社の境内の一部が定期借地権で貸し出され、そこにマンションが建設されることと、現在その建設が進行中であることについて書きました。それを書きながら、ひょっとしたらこれが突破口になって、あとに続く神社仏閣が出てくるような気がしていたのですが、やはり勘が当たってしまいました。ごく最近、まったく似たような話が明らかになったのです。しかも今度の件は、もっと大規模で、もっと名の知れた神社での話です。

3月3日の京都新聞にこんな記事が掲載されました。僕が梨木神社のことを書いたのは、2月初旬のことでしたから、それからほぼ1ヶ月後のことです。

<京都新聞から引用>

下鴨神社にマンション 世界遺産隣接地、式年遷宮費用に

下鴨神社(京都市左京区)は2日、式年遷宮の費用を捻出するため、境内の一部を高級分譲マンション用地として事業者に貸し出すと発表した。世界遺産として知られる国指定の史跡「糺(ただす)の森」の隣接地を50年間の期限付きで貸し、年間約8千万円の地代収入を境内の整備や文化財の保存事業などに充てる。

計画地は境内の南端約9600平方メートルで、現在は有料駐車場や研修道場として使われている。世界遺産に登録されている史跡区域とは、御蔭通(みかげどおり)を挟んで隣り合う位置にある。

計画では、敷地の中央を通る表参道の両側に、高さ10メートルの鉄筋コンクリート造3階建て計8棟(計107戸)と駐車場、自転車置き場などを整備する。11月に着工し、2017年2月に完成する予定で、富裕層向けのマンションになるという。

あわせて、敷地内の表参道を石畳風舗装に改良するほか、御蔭通の歩行スペースの拡幅や建物周辺の植樹を行い、景観との調和を図るとしている。研修道場は老朽化のため取り壊す。

下鴨神社では、21年ごとに社殿を大規模修理する式年遷宮に取り組んでおり、今年4月にはご神体を仮本殿から本殿に戻す「正遷宮」が営まれる。資金を工面するため08年度から募金事業を行ってきたが、リーマン・ショック後の景気の落ち込みなどで、当初見込んでいた企業などからの寄付が目標の半分程度しか集まらなかったという。

同神社は「式年遷宮には莫大(ばくだい)な費用がかかり、募金を柱に資金を確保するのは難しい。収益事業を拡大し、境内に85棟ある社殿を1棟でも多く修理したい」としている。

<引用終了>

なんとまあ、規模は違いますが、前記の梨木神社のケースとそっくりな内容ですね。今の段階で、梨木神社と異なる点は以下のようなことだと思います。

1)神社側が年間に受け取る地代が、梨木神社が約8百万円に対して、下鴨神社は約8千万円と10倍の規模。

2)分譲予定戸数が梨木神社35戸に対して、下鴨神社107戸と約3倍。

3)定期借地権の設定年数が、梨木神社60年に対して、下鴨神社は50年。

4)下鴨神社は世界遺産の指定を受けている。

5)梨木神社は、マンション建設に関して、所属していた神社本庁の同意が得られなかったために、同庁を離脱したのに対して、下鴨はなんとか同意を得た。

6)下鴨神社の場合、設計・施工を全国的大手の竹中工務店が手がける。梨木神社の場合は、このランクの最大手ゼネコンは手を出しませんでした。

ということで、今回は何やら突破口となった梨木神社のケースから大いに学んで、よりスマートに、より大規模にやったような気がします。

上の左側の地図をご覧いただけますか?クリックしていただけますと、大きくなりますので、よりわかりやすくなると思いますが、境内南端の「第三期」「整備計画地」と表示してあるのが、今回のマンション建設用地です。下鴨神社境内総面積約12万平方メートルの内、南端の9600平方メートル(約2900坪)ですから、ほんの一部と言えばその通りですし、この地域は世界遺産指定を受けているわけではありません。世界遺産指定を受けているのは、御蔭通(みかげどおり)をはさんだ北側の緑色の線で囲まれた部分です。

下鴨神社は、マンションの開発によって借地料収入を得なければならない理由として、以下の2点を挙げています。

1)21年ごとに約70棟に及ぶ社殿を修復したり、屋根の檜皮(ひわだ)をふき替えたりする「式年遷宮」の費用を捻出するため。2015年4月には34回目の遷宮が行われます。遷宮には1回で約30億円の費用がかかるものの、国から受け取る補助金は8億円ほど。残りの約22億円は、個人や企業などからの寄付で賄わなければならないのですが、実際に集まったのは必要額の半分以下。今後も大きく増えることは期待できません。

2)マンション計画地は古くから糺の森の一角を占めているにもかかわらず、文化財指定地や世界遺産の区域から外れ、環境の維持や保全に公的な補助が受けられない。計画地内にある研修道場は老朽化している上、耐震性にも問題がある。しかし、神社独自の予算では解体さえままならない状態。樹木の管理も行き届かず、糺の森の植生とは異なる樹木が生い茂り、荒れた状態となっている。

ということで、これまでのような寄付金頼みの収入では、今後、文化財として神社を次世代に残すのが難しくなると考えて、数年前から所有する敷地の活用方法を模索していたのだそうです。

宮司さんの話でも「これから先、人口も減る中でさらに苦しい状況になる。次の遷宮のためには、思い切って集合住宅の建設を決断せざるを得なかった。」とのことで、まあやむを得ないか、というのが実際のところなのでしょう。そのかわりに、マンションの入居者には、葵祭などの伝統行事の支援者となってもらったり、氏子団体への加入を求めるのだそうです。

上段右の地図にありますように、この場所は、京阪叡山電鉄・出町柳駅から徒歩5分の好立地です。すぐ南側に広がる下鴨という高級住宅地とも相俟って、かなりの高級マンションになることでしょう。

ただ気がかりなことがあります。梨木神社の場合もそうですが、定期借地権終了後は契約延長権とか、建物買取要求権等、入居者の所有権や借地権は一切消滅するのですが、その時点で神社側には、それまでの地代収入に替わる別の収入があるだろうか、という点です。

50〜60年先のことですから現在の当事者は、ほとんどすべていなくなっていることは間違いありませんが、現在行き詰まっている寄付金頼りの収入形態が、数十年後に解決されているとは考えにくいのです。結局、同様な土地の貸し出しを新規にせざるを得ないのではないか、と老婆心ながら思ってしまいます。

もう1点あります。それは梨木神社のケースが突破口となったように、今回のより大規模で名の通った下鴨神社のケースは、同様な財政課題を抱えている他の多くの神社仏閣の今後の経営に大きな影響を与えるように思えることです。つまり、あとに続く神社仏閣の輩出に歯止めがかからなくなるのではという危惧です。ささやかながら、会社の経営に責任を持つ者としましては、資金繰りのことは他人事ではありません。決して誰かがやってくれるわけではないのです。自力で解決するしかないのです。

この開発の概要は以下の通りです。

開発名:糺の森第三期整備計画
所在地:京都市左京区下鴨泉川町60
最寄り駅:京阪・叡山電鉄 出町柳駅徒歩5分
面積:土地9647平方メートル、延べ床面積未定
構造:RC造
階数(地上/地下):3/0
用途:住宅
戸数:107
事業主:賀茂プロパティーズワン合同会社
設計者:竹中工務店
施工者:竹中工務店
工期:2015年11月 〜 2017年2月

以下は完全部外者としては、まったく余計なお世話なのですが、定期借地権物件とは言え、分譲価格はかなりのものになるだろうなあ(多分、億ション)ということに加えて、入居者の月々の負担も相当な金額になるだろうという点も、俗物として気になります。

梨木神社の場合もそうでしたが、ここでもかなりの固定資産税の他に以下のような固定的な諸費用が毎月発生するはずです。

管理費、修繕積立金、解体準備金、地代

ここの場合、下鴨神社が受け取る地代は年間8千万円の予定だそうですから、それを単純に107戸で割ると、年間約75万円。ということは地代だけでも1戸あたり月額6万2千円程度ということになります。解体準備金も梨木神社の60年よりも10年短い定期借地権ですから、当然あちらよりも高くなります。ということで、この4項目の費用だけでも毎月10万円をはるかにオーバーしそうです。

定期借地権物件ですから、転売もなかなかたいへんだということを考えますと、まあお金をふんだんに持っている特殊な層の人々の別邸として購入されるのだろうなあ、とまったく無関係な僕は思っています。

それにしても、梨木神社と下鴨神社がやったのだからウチも、と思う方々はかなりいそうですね。どうしたものでしょうか?

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